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AISASとは?AIDMAや他の購買決定モデルとの違いについても解説!

最終更新日:2024.02.09編集部
AISASとは?AIDMAや他の購買決定モデルとの違いについても解説!

AISASとは?

AISASとは?

AISAS(アイサス)とは、株式会社電通が2004年に提唱(翌2005年6月には商標登録)した、消費者の行動モデルです。AISASは、インターネットが普及し始めた時代の、消費者行動に合わせた形で生まれました。このモデルは、商品やサービスに対する消費者の注意を引くところから、購買後の情報共有に至る心理的なステップを5つに分けて示しています。

  • Attention(注意)

  • Interest(関心)

  • Search(検索)

  • Action(購買)

  • Share(情報共有)

上記の順で進行する考え方で、それぞれの頭文字をとって「AISAS」と命名されています。

AISASを理解することで、マーケティング担当者やビジネスオーナーは、消費者の購買行動をより深く把握し、効果的なマーケティング戦略を立てることが可能となります。

Attention:注意

Attention:注意

「Attention=注意」とは、消費者が商品やサービスに初めて触れる瞬間を指します。たとえば、SNSやニュース、広告などのメディアを通じて、新しい商品やサービスを知ることが挙げられます。

  • Webの検索結果画面

  • Web広告

  • SNSのタイムラインで流れてくる情報

情報に触れるシーンは、主に上記のようなシーンが想定されます。

情報量が膨大にある現代では、消費者の注意を引きつけることは容易ではありません。企業やブランドは、独自性や魅力を持ったコンテンツを提供することで、次のステップとなる消費者の興味関心を引き寄せる必要があります。とくに、デジタルマーケティングの領域では、ユーザーに合わせたフォーマットを、適切なタイミングで提供することが求められます。

そのため、「注意」の段階で重要なことは、単に情報を発信するだけでなく、ターゲットの中でもできる限り多くの方の目に触れる工夫をすることです。

Interest:関心

Interest:関心

注意の段階を経て、消費者が商品やサービスに興味を持ち始める段階が「Interest=関心」です。消費者が具体的な情報を求め、詳細を知りたいと感じるようになっている段階であると言えます。

この段階では、注意を引くだけでなく「自分にとって関係があるかもしれない」と思わせるような、記憶に残るコンテンツが必要です。インパクトのあるキャッチコピーや画像・動画など、消費者の関心を寄せるために工夫を凝らした情報提供が求められます。また、商品やサービスの具体的な情報や魅力的な特徴、他商品との違いなどを明確に伝えることで、関心をより高められます。またこのとき、過大表現をもちいた広告などを使用してしまうと、先のステップにある「情報共有」の段階で、事実相違であると発信されてしまう可能性があるため、提供情報が正確であるかどうかにも注意が必要です。

ここの関心度合いが強ければ、次のステップである検索行動につながります。

Search:検索

Search:検索

消費者が商品やサービスに関心を持った後、具体的な情報を求めて行動を起こすのが「Search=検索」の段階です。この段階では、消費者はさまざまな手段を通じて情報を調査します。

  • 検索エンジンで表示されるWebページ

  • SNSのタイムラインに流れる投稿

  • YouTubeなどの動画コンテンツ

  • 商品のレビューサイト情報

  • 販売ページの口コミ

  • 関連する書籍

消費者は、販売する会社が提供する情報だけではなく、上記例のように幅広い範囲から、検討する商品の詳細や他者の評価を確認します。

情報を提供する企業は、多様な窓口からのアクションに対応できるような施策が必要です。たとえば検索エンジン経由であれば、SEO(検索エンジン最適化)の取り組みを通じて、消費者が情報を検索した際に上位表示されることも重要です。また、SNSアカウントを作成し、商品のプロモーションを継続的に発信することも大切な取組みになります。

Action:購買

Action:購買

消費者が注意→関心→検索のステップを経て、商品を手にしたい・購入したいという心理へ進んだ段階が「Action=購買」です。この段階は、消費者が商品やサービスの価値を認識し、それに対する投資が正当であると判断する状態を意味します。

消費者の購買意欲を決定づけるためには、明確なクロージングコンテンツ(契約意思を決定づける訴求)も大切です。

  • 期間限定価格での提供

  • 割引キャンペーンの実施

  • おまけ商品の付帯

また、重要事項やプライバシーポリシーページが設置されているかなど、安心して購入できるかの印象に関わる部分も購入意思を決定づける大切な要素です。さらに、購入後にアフターサポートなどのサービスがあることも、消費者の購買意欲を高める要因となります。

Share:情報共有

Share:情報共有

「Share=情報共有」とは、購買後(サービス使用後)、消費者がその情報を他者と共有する段階です。

  • 販売サイトでの口コミ

  • SNSの投稿

  • ブログサイトでの投稿

  • 口頭での共有

情報共有は、上記例のようにさまざまな方法でおこなわれ、共有される情報は「Search=検索」の段階でも活用されます。そのため、情報共有をしてもらう仕組みを作るために、シェアしやすいようWebサイト内にSNSボタンを設置するなどの工夫や、シェアしてくれた顧客への特典付帯などの施策を実施することも大切です。

インターネットが普及した現代では、購入前に他者の評価や体験談を参考にする傾向が強くなったため、この情報共有は非常に重要な役割を果たします。とくにSNSの普及により、一つの情報が瞬時に多くの人々に広がることが可能となりました。

企業やブランドにとっては、この段階でのポジティブな情報共有は、新たな消費者の獲得やブランドイメージの向上につながります。逆に、ネガティブな情報が共有されることの影響も大きくなるため、質の高い商品やサービスの提供、そしてアフターサポートの充実が求められます。

AISASとAIDMAの違い

AISASとAIDMAの違い

AISASと似た用語として「AIDMA(アイドマ)」があります。AIDMAも消費者の購買行動を示すモデルの一つで、商品やサービスに対する消費者の認知から購入に至るまでの心理ステップを意味しており、以下工程の頭文字からとって命名されています。

  • Attention(認知)

  • Interest(関心)

  • Desire(欲求)

  • Memory(記憶)

  • Action(行動)

1920年代のアメリカにて提唱されたモデルで、古くからマーケティング基礎のひとつとされてきました。

AISASにある検索行動や購入後の情報共有がないことからわかる通り、AISASと比較し受動的な心理ステップであるとも言えます。そのため、消費者がじっくりと検討・検索などをする必要性が少なく、衝動的に購入できる商材にはAIDMAが適していると言えます。

逆に、家具・家電・住宅などの高価格商品や、クリニックや塾など継続的な支払いが必要なサービスなど、購入前にじっくりと検討を重ねるような商材においてはAISASを用いたマーケティング戦略が効果的です。

AIDMAからAISASへと変化した時代背景

AIDMAは、テレビやラジオ、新聞などのマスメディアが主流だった時代の消費者購買行動モデルを示すものでした。しかし、2000年代に入ると、インターネットの普及が進み、消費者の情報収集や購買行動が大きく変わります。消費者は自ら積極的に情報を検索し、その情報をもとに購買判断を下す傾向が強まったことで、受動的ではなく能動的に情報を取得する心理モデルであるAISASの考え方が浸透しました。

このように、AIDMAからAISASへの移行は、インターネットを主とするデジタル技術の発展における影響が大きいと言えます。消費者と企業の関わり方が根本的に変わっていった時代背景に合わせて、マーケティング戦略も変化していくことを理解しておきましょう。

AISASと似ている「AISCEAS」とは?

AISASと似ている「AISCEAS」とは?

AISASの別バリエーションとして、AISCEAS(アイセアス)という言葉も存在します。AISCEASとは、2005年にアンヴィコミュニケーションズによって提唱された消費者行動モデルのひとつです。AISASとAISCEASは同時期に誕生しており、どちらもインターネット普及後の消費者行動プロセスを反映したものです。

AISCEASはAISASをより詳細にしており、以下7つのステップから成り立っています。

  • Attention(注意)

  • Interest(関心)

  • Search(検索)

  • Comparison(比較)

  • Examination(検討)

  • Action(購買)

  • Share(情報共有)

このモデルの特徴的な部分は、検索から購入に至る途中で「Comparison(比較)」と「Examination(検討)」の2つのステップが追加されている点です。これにより、実際の消費者行動をより詳細に理解したうえで、マーケティング戦略を検討することが可能となります。

AISASをマーケティングに取り入れた事例

AISASモデルを実際のマーケティング戦略にどのように取り入れるのか、具体的なイメージが湧きにくいこともあるでしょう。そこでこのセクションでは、AISASを効果的に取り入れて成功を収めた企業の事例をいくつか紹介します。

スターバックス

スターバックス

https://www.starbucks.co.jp/

スターバックス」は、世界的なコーヒーチェーン店として知られ、AISASモデルを効果的に活用しています。とくに「Share(情報共有)」の部分において、消費者が自発的にプロモーションをおこなう仕組みが特徴的です。

スターバックスでは、SNSを中心に集客活動をおこなっており、新商品の情報はSNSを通じて瞬時に拡散されます。また、スターバックスは季節限定商品の発売など、消費者の興味を引きつける戦略を採用しています。興味を持った消費者は、SNSのハッシュタグ検索を頻繁におこない、その結果として店舗を訪れて購入に至るケースも多いです。さらに、スターバックスの商品や店内は写真映えするため、購入後のSNSでのシェアが活発におこなわれています。

このShareの強みにより、スターバックスは広告費を大幅に削減しながらも、効果的な集客を実現していると言えます。

コストコ

コストコ

https://www.costco.co.jp/

コストコ」はアメリカ発祥のディスカウントストアであり、その独特なビジネスモデルと会員制のサービスが特徴です。

コストコはその会員制の仕組みや、海外基準の商品ラインナップなどで、消費者のAttention(注意)をうまく刺激しています。さらには限定商品や季節商品の試食コーナーなどで、顧客のInterest(関心)を深める工夫もされています。そしてこのような独自の仕組みや商品は、SNSや口コミで拡散されやすいといった効果もあるのです。

国内スーパーとは異質な存在感がコストコの独自性を強調しており、競合に対して明確な差別化ができている点がコストコの強みと言えます。

RIZAP

RIZAP

https://www.rizap.jp/

RIZAP」は、RIZAPグループ株式会社が運営するパーソナルトレーニングジムで、独自のマーケティング戦略で高い認知度を獲得しています。

耳に残る音楽と印象的な構成で制作されたインパクトのあるCMを集中的に放送したことで、消費者の注意や関心を高めました。また、RIZAPのWebサイトは、興味を持った人々に詳しい情報を提供し、購入を促進するための情報が充実しています。価格が高額であるため、購入のハードルを下げる「30日間の全額返金保証制度」を導入することで、購買ハードルを下げる努力もおこなっています。さらに、紹介制度を導入することで、顧客が自らの経験を共有する仕組みも整えられている点も特徴です。

RIZAPのブランディングは、パーソナルトレーニングジムそのもののカテゴリを世の中に浸透させました。現在もchocoZAP(チョコザップ)といった「手軽さ」が売りのトレーニングジムを展開しており、こちらも注目を集めています。情報共有される現代の特性を意識したプロモーションをうまく実施し続けており、そのマーケティング戦略は見事と言えます。

AISASは古い?次世代の購買決定モデル

AISASモデルは、インターネットが日常生活に浸透した2000年代初頭に提唱された消費者の購買行動モデルです。しかし、現代の生活様式は当時から更に進化していることから、新しい購買決定モデルも次々に誕生しています。その中でとくに注目されているモデルが「Dual AISAS」や「DECAX」です。

これらの新しいモデルは、消費者の購買行動をより詳細に捉え、マーケティング戦略の最適化に役立てることが期待されています。

Dual AISAS

Dual AISASとは?

Dual AISASは、AISASにおけるAttention(注意)を補完する行動プロセスで、2015年に株式会社電通プロモーション・デザイン局と株式会社アラタが共同開発した行動モデルです。AISASが「買いたい」という心理に向かうものとして定義し、Dual AISASは「広めたい」という心理モデルからA+ISASとなるステップで定義されています。

  • Activate:起動・活性化

  • Interest:興味

  • Share:共有・発信

  • Accept:受容・共鳴

  • Spread:拡散

Dual AISASの構成は上記の通りです。「ISAS」の部分でAttention(注意)を補完し、商材へ関心を寄せる流れを「Activate:起動・活性化」としています。情報過多となりがちな現代において、いかにAttention(注意)を引き付けるかといった観点で考えられているモデルとも言えます。

DECAX

DECAXとは?

DECAX(デキャックス)は、SNSの活用なども視野にいれた消費者行動モデルとして位置づけられています。

  • Discover:発見

  • Engage:関係

  • Check:確認

  • Action:行動

  • Experience:体験共有

DECAXは2015年、電通デジタルホールディングスが提唱したモデルで、上記5つのプロセスから構成されています。

AISASは企業側からの情報提供により、消費者が商品やサービスを発見する想定ですが、DECAXでは消費者自身がSNSなどを通じて自ら発見することを想定します。そしてSNSやメッセージツールを通じて顧客候補となる消費者と関係を構築し、自身にとって必要なサービスか確認してもらうステップで構成されているのです。

行動や体験共有はAISASと同様のプロセスですが、消費者がより能動的であることを想定した行動モデルとも言えます。

まとめ

本記事では、消費者の購買行動を理解するためのフレームワーク「AISAS」について、定義やその誕生背景の解説、具体的な成功事例やAISASの次世代モデルなどをご紹介しました。

マーケティング担当者やビジネスオーナーにとって、消費者の購買プロセスを理解する手助けになれば嬉しいです。また、マーケティングトレンドの把握に活用していただき、消費者の購買行動に対する新しい視点を得るヒントにしていただければと思います。

参考サイト

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