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職種名問題は"デジタルプロダクトデザイナー"で決着したい。デザイナーのアイデンティティ、崩壊しがち説

最終更新日:2024.10.19編集部
職種名問題は"デジタルプロダクトデザイナー"で決着したい。デザイナーのアイデンティティ、崩壊しがち説

突然ですが、皆さんは自分の仕事を周りに何と説明していますか?

〇〇デザイナーといった職種名は”何をデザインするのか”というデザインの対象に視点を置いたものとなっているものの、デザインの対象や責任範囲がえてして横断的であるデジタルデザイン界隈では、これらの職種名が正確な職責を反映しているケースは少ないのではないでしょうか?

結局、これらの職種を名乗る者も、募集する企業もそれぞれの事情で便宜的に使い分けているケースが多いと思います。

思い切って「デザイナーです」とまとめてしまうのも良いですが、さすがに意味合いが広すぎる。

また、UI/UXデザイナーという表記に関する論争は終わった…というより誰も触れなくなったし、誰も触れたくない話題のような気もします。しかしながら、国内求人情報サービス6サイトの求人票を集めてみると、今現在も”UI/UXデザイナー”としての募集が圧倒的に多いという現状。

求人サービ6サイトでの募集職種名

結局、多岐にわたる担当領域と、気持ち良く自身のアイデンティティを表現してくれる職種名の不在により、デジタル領域のデザイナーたちのアイデンティティは崩壊するのです。

デザインの対象はそれほど重要だろうか?

デザインの"対象"がデザイナーのアイデンティティを形作るのか?

デザインという言葉の定義にまつわる一般的な歴史的背景を簡単にまとめると、

  • 20世紀初頭に始まったモダニズム運動にて、デザインは具体的なモノの審美性と機能性に焦点を当てていた

  • 1940年代以降、デザインの対象が無形のサービスや体験などの抽象的な概念に広がる

  • 現在、デザインとは具体的なアウトプットの有無に関わらず、創造的な問題解決と価値創造のプロセスである

といった感じでしょうか?

もともとモノを作る営みであった”デザイン”は、そのプロセスを抽出されて、無形のサービスや抽象的な概念にまで”その対象を広げた”。というのが、近年よく聞くデザインの拡大についての解説だと思います。

しかし、本当にそうでしょうか?

このデザインの”対象”という見方が多くの誤解を生んでいるのではないでしょうか?職種名の混乱を生んでいる、”何をデザインするか”というデザインの”対象”はデザイナーの本質的なアイデンティティを左右するほど重要な要素なのでしょうか?

デザインにおいて抽象は常に通る道。デザイナーをデザイナーたらしめるものの存在。

UIとUXってそんなに違う?

UI/UXデザイナーという名称に対する批判でよく見かける「UIとUXは別物だ」という意見。確かにこの2つをデザインの”対象”として考えるとUIは具体的、UXは抽象的なもので”全くの別物”のように見えます。その範囲の広さも異なるように見えます。特にデザイナーではない人から見れば、この2つの課題解決にはそれぞれ異なるスキルセットを要するものに見えると思います。

しかし、実際にUI/UXデザイナーと名乗ったことがある多くの人たちは、この二項対立的な構図に違和感を感じるのではないでしょうか?「別にUXリサーチもするし、UIも作るよ」という人がたくさんいるのです。

デザインの対象が拡大したわけではないのでは?

具体的な”モノ”を作っていたデザイナーが、なぜユーザー体験やサービスといった抽象的な概念をデザインできるのか?それは、デザイナーは具体的な”モノ”を作るプロセスの中で、そもそもいつも抽象的なプロセスを経ているからだと思います。UIをデザインするときも、UX戦略を考えるときも、デザイナーの頭の中ではデザイン対象として具体と抽象が分かれているわけではなく、課題解決に辿り着く過程で必ず抽象的な思考を通っていて、デザイン対象に関わらずプロセスはほとんど同じはずなのです。

もちろん、極限までプロダクトデザインのプロセスが分業化されていて、最終的なUIに決められた色をつけるだけのような作業をUIデザインと呼ぶのであれば、それはUXデザインとは遠い作業でしょう。しかし、それはもはや”デザイン”ですらないはずです。

決められた作業を行う�だけであれば、それはデザインではないかも

デザイナーは、一見色をつけているだけに見える一瞬のプロセスの中でも、頭の中で課題解決のための抽象的なプロセスを経ていて、周りからは見えない場所でとても高度な創造を行なっています(本人すら無意識かもしれませんが)。この実践と経験の中で繰り返された抽象と具体のプロセスがデザイナーをデザイナーたらしめる要素を生み出すのではないでしょうか?

一瞬で色や形を選択しているように見えても頭の中で抽象的なプロセスを通っている

もちろん、この「抽象 -> 具体」のデザイン的プロセスをどこまで言語化できるかといった差異はデザイナー間に存在し、言語化が上手だとビジネス的にウケが良く活躍の機会が増えるという資本主義的な特殊事情はあるものの、本質的にやっていることは同じだと思うのです。

結局のところ、言語化スキルに関わらずデザイナーとはこのようなデザイン的プロセスを”圧倒的な量のアウトプットや仮説検証を伴う実践と経験”から身につけた人たちなのではないでしょうか?デザイン思考などのフレームワークで説明できるほどシステマティックではなく、もっと混沌とした”感覚”として身につけたこの「特殊能力」がデザイナーをデザイナーたらしめるのだと思います。

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職種名は“デジタルプロダクトデザイナー”くらいがちょうど良いかも

話が大きくなりましたが、職種名の話題に戻りましょう。

結局のところ、デジタルデザイナーの職種名においてデザイン対象はあまり重要ではなく、関わる分野を表すことができる程よく包括的な名前を使うと良いと思っています。UXデザイナー、UIデザイナーという名前の問題点はデザインの対象が限定的であることなので、少なくともあなたがデザイナー的特殊能力を持っていると感じるのであれば、

“デジタルプロダクトデザイナー”

これで良いのではないでしょうか?

”デジタルプロダクト関連のデザイン”するという職務を表現できており、職種名で表現できる職務範囲としてはちょうど良さそうです。国内外の求人情報を見ると、まだまだ浸透しきっているとは言えないものの、最近はデジタルプロダクトデザイナーを名乗る人も増えてきました。社内などのデジタルなプロダクトに取り組むことが明確な文脈では、”プロダクトデザイナー”と名乗るケースも多いですね。

UI/UXデザイナーを名乗りづらいと感じる皆さん、UI/UXデザイナーの採用活動を行う皆さん。”デジタルプロダクトデザイナー”という職種名を広めていきませんか?

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