
小紅書(RED)とは?
『小紅書(RED)』とは、買い物やライフスタイルに興味を持つ若いインターネットユーザー向けのモバイルアプリケーションです。サービスのコンセプトは、「ユーザーがプロダクトを通じて、世界中の良いものを発見することができること」であり、インフルエンサーの投稿を閲覧したり、商品を使用した感想を共有し合うこともできます。また、アプリ内には、ショッピング機能もあるため、気に入った商品を購入することができ、RED一つのプロダクトで「発見 → 交流 → 購入」という一連の体験ができます。
REDは、コスメ、メイク、ファッションなどの情報が充実していることで知られていますが、実はグルメ情報から、トレーニング、旅行、就職、不動産、資産運用など、生活上で「困っている」、「知りたい」と思っていることについても、アプリ内で調べることができます。
よく「中国版 Instagram」と呼ばれるREDには、実際にターゲットユーザーがInstagramと似ているところがあると思われます。REDのユーザー像は、中国の若い女性層が中心となっています。具体的には、10代後半から20代前半の女性が多く利用しており、2020年に中国のマーケティング調査会社「QuestMobile」が発表したデータによれば、REDの利用者のうち、女性が88.4%、男性が11.6%であるとされています。
台湾出身のB2Bプロダクトデザイナー。台湾初のアクセシビリティWebメディアを立ち上げました。海外のデザイントレンドなどを共有します!
REDのデザインはInstagramとどう違う?
前文でREDの基本情報、ユーザー像を紹介しました。私たちデザイナーとして気になるのは、似ているプロダクトの、デザイン的な違いについてではないでしょうか?次のセクションでは、情報デザインの視点から、大きな違いを3つ紹介していきたいと思います。
トップページのデザイン
RED:発見機能(パーソナライズされた投稿がレコメンドされる機能)がメイン、フォローしてるコンテンツがサブ
Instagram:フォローしてるコンテンツがメイン、発見がサブ
アプリのトップページはユーザーにとって最も重要な画面のひとつであり、製品の特徴的な機能やコンテンツを提示する場所でもあります。
REDとInstagramの両方には「フォロー」と「発見」の機能がありますが、Instagramのトップ画面は「フォローしているアカウントの最新情報」をメインにしているのに対して、REDのトップ画面は「未知の情報と出会える探索機能」を中心として構成されています。
なぜこうした違いがあるのでしょうか?前述したように、REDのプロダクト理念は「ユーザーがプロダクトを通じて世界中の良いものを発見すること」にあります。それに対して、Instagramはもともとソーシャルメディアであり、知り合いやフォローしているアカウントとの交流を重視しています。
このようなプロダクト理念を表現するための情報デザインでは、「フォロー」と「発見」の機能のどちらをメイン機能とするかが重要です。REDでは、未知の情報やものごとと出会うことを最も重視しており、ユーザーのコメントやお気に入り内容を考慮して、アルゴリズムに基づきパーソナライズされた投稿をレコメンドしています。このため、ユーザーはまず発見機能を通じてお気に入りのユーザーと出会った後にフォローするというUXフローが設計されています。
投稿の見せ方
RED: タイトルテキスト+横・縦画像。
Instagram:正方形画像。
REDを開くと、一番気づきやすいInstagramとの違いは投稿の見せ方です。Instagramの発見タブでは写真をメインにしているのに対し、REDではタイトルテキストと縦・横画像になっています。
テキストと縦写真が表示されるため、1画面あたりに表示される情報の量もそれに応じてInstagramより少ないです。筆者 のスマホでは、Instagramで1画面あたり約12枚くらいの投稿が見られますが、REDで4枚しか見られません。
このようなデザインの違いは、プロダクトの理念との深い関わりがあると考えられます。REDのプロダクト理念は「ユーザーが商品や生活の感想をシェアすること」を重要視しているため、ユーザーが商品などの感想を気軽に共有できるよう、1つの投稿に大量のテキストを含めることができるようになっています。
REDアプリ内では、ユーザーは画像とテキストの両方を合わせて見ることも多いです。例えば、新しいコスメのレビュー投稿では、コスメの写真はもちろん、購入したきっかけ、場所、金額、使ってみた感想などをテキストで表現するユーザーが多いと思われます。
Instagramは元々写真や映像を共有するプロダクトなので、見栄えがよく、おしゃれな写真を見せることを一番重要視しています。ビジュアル要素を全面的に強調することによって、見やすく、そして共有しやすいコンテンツになっています。
ユーザー間インタラクション
RED:一つの投稿内での活発な交流とコミュニケーション、インタラクションを重視
Instagram:ユーザーが自分のコンテンツを共有し合う、投稿すること自体を重視
REDでは、商品を使用した感想を共有するという目的があるため、コミュニティ属性に注目し、ユーザーがプラットフォーム上で意見や商品使用体験を共有することを交流内容とし、ユーザー間の相互性とプラットフォームの活発度を増加させると言われています。
コミュニケーションを強化することによって、元々投稿にはなかった情報も得られ、商品に対する疑問や不安にすぐに回答が得られるため、結果的に購入に繋がりやすいというREDのビジネス戦略でもあります。コメントを読むことが投稿を見る醍醐味と言っても過言ではありません。
そ のため、REDの投稿内では、いいね数やコメント数の数字を大きく表示し、その投稿でのコミュニケーションの活発さを瞬時にユーザーに伝えます。また、画面中に書き込み欄が二つあることもデザイナーとして気になるポイントで、これはユーザーの書き込みを促すためのデザインになっています。
一方、Instagramは、ユーザーが自分のコンテンツを共有し合うことを目的としており、コメント機能を比較的強調していないと思われます。ユーザーがInstagramを閲覧するときは、投稿自体を見るという前提で使っているのではないでしょうか?
そのため、現在のInstagramのUIでは「いいね数」も表示されず、コメントもわざわざ開かないと読めないというデザインになっています。投稿にソーシャル属性を残しつつ、「ユーザーがコンテンツを共有し合う」ということを主張している印象を受けました。
なぜREDのユーザーはそんなに熱心に商品のレビューをシェアするのか?
中国のEC市場は世界一の市場規模と言われています。オンラインショッピングが流行っているからこそ、購入前に実際に商品を触ってみたり、商品に関する詳しい情報を得たりをすることが難しく、商品のレビューなどの情報もインターネット上で知る必要があります。その中 で、他人が実際に使ってみた「口コミ」という形式は一般ユーザーの視点で情報を提供してくれるので、親しみやすく参考になると思われる傾向があります。
ユーザーはレビューを共有することで、同じ趣味を持つ人たちとの交流を楽しむことはもちろん、良い内容をシェアすることで、他ユーザーの信頼を得ることにもつながります。つまり他のSNSと同様に、フォロワーやいいね数を増やすことで自分の「価値」を高められると考えられているのです。それに加え、YouTuberやインスタグラマーのように、インフルエンサーはREDでPR案件を依頼されたり、自分のブランドを立ち上げたりをすることでお金を稼ぐことができるといった側面もあります。そういったインフルエンサーとしてのライフスタイルに憧れるユーザーも多く、ユーザーが熱心に商品レビューを投稿する理由となっているようです。


まとめ
今回は中国版のInstagram「RED」を紹介しました。REDもInstagramも、両方とも若い女性が多いプラットフォームですが、実は違う部分が結構あります。その理由は文化などの違いもありますが、製品の戦略の違いも大きく影響しています。
特 に情報デザインの観点でREDとInstagramの違いを分析しました。次回SNSを見る際には、是非情報デザインの観点から投稿の見せ方やインタラクションの設計に注目してはいかがでしょうか?
参考資料