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DXとは?基本概念から具体的な事例までわかりやすく解説

最終更新日:2024.02.15編集部
DXとは?基本概念から具体的な事例までわかりやすく解説

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を駆使してビジネスモデルや社会、さらには生活様式自体を変革する動きを指します。DXの概念は、スウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱されたものです。

ビジネスにおけるDXの核心は、単に新しい技術を導入することではなく、その技術を活用して業務プロセスや組織構造、企業文化まで再考し、顧客や市場のニーズに応える革新的なサービスや製品を生み出すことにあります。

変化が激しい現代のビジネス環境では、企業も常に新しい挑戦に直面しています。このような環境下で競争に勝ち残るための優位性を確立するためには、DX化が不可欠です。DXによって、企業は顧客をより深く理解し、その洞察をもとに製品開発やサービス提供の方法を根本から見直すことが可能になります。また、業務効率の向上やコスト削減、新たなビジネスチャンスの創出といったメリットも期待できます。DXは、企業が持続可能な成長を遂げるための鍵として、注目されているのです。

DXとIT化・デジタル化の違い

DXとIT化、デジタル化の違いは、その目的と範囲にあります。DXは、デジタル技術を駆使してビジネスモデルや組織文化、顧客体験を根本から変革し、新たな価値を創造することを目指します。

一方IT化は、業務プロセスを効率化するために情報技術を導入することに焦点を当てており、デジタル化はアナログ情報をデジタル形式に変換することを指します。

つまり、IT化やデジタル化は、DXの基盤を築く手段として捉えられ、DXは手段をもちいた全社的な変革を目指すものとされています。

DXの推進する代表的な技術

DXを推進する上で、中心的な役割を果たす技術が以下の技術です。

  • AI(人工知能)

  • IoT(モノのインターネット)

  • クラウド

これらの技術は、ビジネスプロセスの自動化やデータ収集と分析の高度化、柔軟なリソース管理を可能にします。

AI

DXの推進においてAIは欠かせない技術です。ビジネスにおいては、以下のような改革に活用できると期待されています。

1. 業務効率化

AIを活用することで、これまで人間が行っていた業務を自動化・効率化できます。たとえば、顧客対応やデータ分析、製造プロセスの管理など、すでにさまざまな業務でAIが活用されています。

2. 新規ビジネスの創出

AIを活用することで、新しいビジネスを創出することも期待できます。たとえば、AIを使った画像認識・解析技術を活用した自動運転や、AIを使った自然言語処理技術を活用したチャットボットなど、さまざまな新規ビジネスが生まれることが期待されています。

3. 顧客体験の向上

AIを活用することで、顧客との接点における体験を向上させられます。チャットボットや音声認識システムを通じて、顧客からの問い合わせに24時間365日対応できるようになります。また、AIを使ったパーソナライズされた商品・サービスの提案や、AIを使ったカスタマーサポートの高度化など、さまざまな顧客体験の向上が図られるでしょう。

4. データ分析と意思決定の支援

ビッグデータ分析と機械学習を利用して、市場動向、消費者の行動、製品の需要予測などがおこなえます。リアルタイムデータ分析を通じて、運用効率の改善やリスク管理の強化が図れます。

これらのケースは、DXにおけるAI活用の一例に過ぎませんが、AIの進化により、これからも新たな活用事例が次々と生まれることでしょう。

IoT

IoT(モノのインターネット)とは、あらゆるモノをインターネット(あるいはネットワーク)に接続する技術です。センサーやデバイスがインターネットを通じて連携し、リアルタイムのデータ収集と分析を可能にすることで、ビジネスの最適化や新たなサービスの創出を実現します。

DXにおけるIoTの活用事例は、業界やビジネスモデルによって異なりますが、一般的なケースを紹介します。

1. スマートファクトリー

製造業において、機械や設備にセンサーを取り付け、リアルタイムでの生産データの収集と分析を行い、生産効率の向上や品質管理、予測保全に活用します。

2. スマートビルディング

ビルの照明・空調・セキュリティシステムなどをネットワーク化し、エネルギー効率の最適化や居住者の快適性の向上を図ります。

3. ウェアラブルデバイスによる健康管理

個人の健康やフィットネスデータを収集し、健康管理や疾病予防に役立てられます。

4. スマート農業

土壌の湿度や温度、作物の成長状態などをセンサーでモニタリングし、収穫量の最大化や資源の有効利用が実現します。

5. スマートシティ

交通管理・公共サービス・エネルギー管理など、都市運営の各分野でIoTデバイスを利用することで、都市の効率性と住民の生活の質を向上させます。

6. サプライチェーン最適化

製品の製造から配送に至るまでの各プロセスにおいて、IoTデバイスをもちいてリアルタイムで情報を収集・共有し、サプライチェーンの透明性と効率性を高めます。

上記はDXにおけるIoTの活用事例の一部ですが、IoT技術の発展に伴い、新たな用途が日々生み出されています。

クラウド

ビジネスにクラウドを活用することで、企業は物理的なインフラストラクチャーから解放されるため、ビジネスの柔軟性は大幅に向上します。DXにおいて、クラウドが活用されるケースは、以下の例があります。

1. データストレージとバックアップ

企業が生成するデータをクラウド上に保存することで、安全かつ効率的にバックアップします。災害時もデータ復旧が容易になるメリットがあります。

2. バーチャルデスクトップとコラボレーション

クラウド上のバーチャルオフィスを構築することで、リモートワーク時の効率化を支援し、場所に依存しない働き方を実現します。

3. デジタルマーケティングと顧客関係管理(CRM)

クラウドベースのマーケティングツールとCRMソフトウェアを使用することで、遠隔でも顧客データの管理が可能になり、より効率的なマーケティング活動が実現します。

クラウド技術は柔軟性が高いため、企業のDX推進に不可欠な役割を果たしています。

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ビジネスにDXが求められている理由

ビジネスにDXが求められる理由は、急速に変化する市場環境と技術進化に対応する必要性にあります。ここでは、以下の内容を軸に解説します。

  • 2025年の崖

  • 働き方改革への取り組み

  • デジタル技術の進化

2025年の崖

「2025年の壁」とは、既存ITシステムの持続可能性が問題となり、DXが急務とされる時期を指します。具体的には、多くの日本企業が使用している旧来のITシステムが陳腐化し、ビジネスの持続可能性に重大な影響を及ぼすリスクのことを指します。

経済産業省のDXレポートでは、この問題に対処するために、企業がデジタル技術を活用してビジネスモデルや業務プロセス、組織文化を根本から見直し、変革することが強く推奨されています。しかし、各事業部門ごとに構築されたシステムのために横断的なデータ活用は困難であり、過剰なカスタマイズによるシステムの複雑化やブラックボックス化が進んでいます。このような状況は、DXを推進する上での大きな障壁となっており、2025年以降には経済損失が最大12兆円/年に達する可能性が指摘されています。

そのため、経営改革としてのDXの実現には、既存システムの問題を解決し、業務自体の見直しが求められているのです。

働き方改革への取り組み

コロナ禍以降、場所や時間に縛られない柔軟な働き方が注目されるようになったため、リモートワーク環境の構築が求められる企業も多くなりました。DXの進展は、この働き方改革にも大きな影響を与えています。

たとえばクラウドサービスやコラボレーションツールの導入により、リモートワークが一般化し、チーム間のコミュニケーションも以前に比べて格段にスムーズになりました。また、AIや自動化技術の利用によって単純作業の削減が進み、従業員がより創造的な業務に集中できるようになっています。これらの変化は、従業員の満足度の向上にも寄与し、組織全体のパフォーマンス向上につながっています。

デジタル技術の進化

デジタル技術の進化は、ビジネスにDXを求める大きな理由のひとつです。AI・IoT・クラウドなどの技術は急速に発展してきています。これらを活用することで、企業は効率化やコスト削減、新サービスの創出など、新たなビジネスチャンスを掴めるようになります。

AIの進化は、データ分析や顧客サービス、製品開発など多岐にわたる領域で革新をもたらし、企業の競争力を大きく左右します。IoTは、製品やサービスをインターネットに接続することで、新たな顧客体験を提供できるようになるため、ビジネスモデルそのものの変革にも影響します。また、クラウド技術は、これらのデジタル技術を支える基盤として、企業の柔軟性や拡張性を高めています。

DXのメリット

DXの導入によるメリットは多岐にわたります。ここでは以下3点のメリットをご紹介します。

  • 業務効率化の実現

  • 業務精度の向上

  • 働き方改革の推進につながる

業務効率化の実現

DXによる業務効率化は、企業にとって大きなメリットです。デジタル技術の導入により、手作業による時間のかかるプロセスが自動化され、業務の迅速化が実現します。たとえば、文書管理システムのクラウド化により、情報のアクセス性が向上し、場所を選ばずに必要なデータにアクセスできるようになります。また、AIを活用した顧客サービスでは、問い合わせ対応の自動化により、顧客満足度を維持しつつオペレーションコストを削減できます。これらの改善は、企業のリソースの再配分にもつながり、全体の生産性向上に寄与します。

業務精度の向上

DXの進展により、業務精度の向上も実現します。データ分析ツールやAI技術の活用により、ビッグデータからの洞察が得られることで、意思決定の精度が高まります。たとえば製造業では、センサーデータを活用して機械の故障を予測し、計画的なメンテナンスにより生産ラインの停止時間を最小限に抑えられます。その他の業種でも、顧客行動の分析精度の向上により、よりパーソナライズされたサービスを提供できるようになるため、顧客満足度の向上につながります。これらの技術は、ヒューマンエラーの削減にも寄与し、全体として業務の精度と効率を大幅に向上させます。

働き方改革の推進につながる

クラウドサービスやコミュニケーションツールの導入でDXを推進することにより、時間や場所に縛られない柔軟な働き方が可能になり、ワークライフバランスの実現に寄与します。リモートワークの普及は、多様な人材の活用を促進し、新たな才能の発掘にもつながります。また、AIや自動化技術の活用により、ルーティンワークが削減され、従業員はより必要な業務に集中できるようになります。

日本におけるDXの状況

日本におけるDXの状況は、業界や企業によって大きなばらつきがあります。

政府は「2025年の崖」を乗り越え、国内企業のデジタル化を加速するために多くの施策を推進していることもあり、大企業ではDXを戦略的に推進し、新しいビジネスモデルの構築や顧客体験の向上に取り組んでいます。しかし、中小企業の中には資金や人材の不足、既存の業務プロセスへの固執などにより、DXの導入が遅れているケースも多い状況です。

また、IPA 独立行政法人 情報処理推進機構が発信している情報によれば、アメリカと比較すると日本国内のDX導入は遅れていることがわかります。2022年度でも、「取り組んでいない」と回答している企業が30%弱ある状況です。

日本企業にとってDXは、単なる技術的な課題ではなく、組織全体の変革を必要とする大きな挑戦です。今後、国内外の競争が激化する中で、DXの推進は企業の持続可能な成長にとってますます重要になっていくでしょう。

なお、DX推進を推奨する経済産業省がまとめたデジタルガバナンス・コード2.0では、 DXの推進指標として3段階のフェーズが定義されています。

  1. デジタイゼーション: 情報のデジタル化

  2. デジタライゼーション: 既存のプロセス・業務のデジタルによる代替

  3. デジタルトランスフォーメーション: デジタル化によるビジネスバリューの創出

企業がDX化に取り組むにあたって、従業員が業務の効率化や高度化によるメリットを実感することも大切です。まずは物理データのデジタル化などから始めて、徐々に個別の業務単位やビジネス全体に浸透させていくなど、上記を参考に段階的に進めていくとよいでしょう。

DX化の事例とツール

DX化の事例として、SmartHRのようにAdobe Marketo Engageを活用して顧客エンゲージメントを高める取り組みや、NECがFigmaをもちいたデザインプロセスの効率化が挙げられます。ここでは、業務の自動化やコラボレーションの強化、顧客体験の向上などが成功した事例を紹介します。

SmartHR(Adobe Marketo Engage)

SmartHRは、Adobe Marketo Engageを活用して、既存リードの再活性化とナーチャリングチームの構築に成功しました。この取り組みにより、顧客を状態に応じて3つのグループに分類し、細分化したマーケティング施策を実施することが可能になりました。また、独自の運用マニュアルとテンプレートを充実させることで、チーム全体のスキルレベルの向上と標準化を実現しました。これらのDX化により、有効リードを100以上上乗せし、商談率も1.5倍に高まりました。

NEC(Figma)

NECは、行政サービスのUI/UX実現に向けたFigmaの活用事例を紹介しました。この事例では、Figmaをデザインツールとしてではなく、コラボレーションを核としたツールとして利用しています。

Figmaをもちいることで、インターフェースのデザインファイルだけではなく、周辺の情報もFigma上に置くことで、チームメンバーが共通の情報を参照できるようになります。情報収集や内容の把握、フィードバックもFigmaの中で完結するようにすることで、ブラックボックス化を防いでいます。

まとめ

この記事では、DXの基本概念から、ビジネスにおけるDXの必要性、DXを推進する代表的な技術や具体事例までを解説しました。デザイナーだけでなく、すべてのビジネスパーソンにとって共通する重要なテーマですので、自社や業界でのDX推進に必要な洞察のヒントにしていただければと思います。

参考文献

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