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ヒューリスティック分析とは?評価項目の決め方や、効果的に行うためのポイントを解説

最終更新日:2024.02.09編集部
ヒューリスティック分析とは?評価項目の決め方や、効果的に行うためのポイントを解説

ヒューリスティック分析とは?UXのプロの知見に基づいて行う分析手法

ヒューリスティック分析とは?

ヒューリスティック分析とは、経験則(ヒューリスティック)を基にしてUX/UI上の問題を発見するユーザビリティ評価手法の一つです。代表的な評価手法であるユーザーテストのように被験者(ユーザー)を必要とせず、「UXのプロである専門家が自身の知見や経験則を基にして主観的に行う分析」になります。

被験者(ユーザー)を必要としないため、より短い時間・労力でウェブサイト・アプリの評価をすることができ、調査の設計によっては、競合との比較を含めて相対的な分析をすることも可能です。ヒューリスティック分析による評価は、分析者の経験値や主観に影響を受ける点に注意が必要ですが、アクセス解析などの数値には表れにくいユーザービリティ面での課題をチェックすることができます。また、初期のプロトタイプでも評価が行えるため、サイトやアプリのUX/UI開発の多くの場面でユーザビリティ改善のために活用されている手法となります。

ヒューリスティック分析の3つのメリット

ヒューリスティック分析の3つのメリット

ヒューリスティック分析には主に以下の3つのメリットがあります。

  1. ツールが必要ないため、クイックに実施できる

  2. データから見えない問題点が分かる

  3. 競合他社との比較がしやすい

1. ツールが必要ないため、クイックに実施できる

ヒューリスティック分析では、サイトやプロトタイプを実際に操作・閲覧しながら分析を進めていきます。そのため、データを事前に集めたり、サイトにアクセス解析ツールを設定するなどの準備が必要ありません。準備の必要がないことに加え、分析する範囲を柔軟に設定することが可能なため、分析者のスケジュール次第に合わせて、いつでもサイトやアプリの分析が可能な点も大きな特徴です。

また、サイトリニューアル前、制作・設計の途中、制作後など、どの段階でも分析の実施が可能なので、あらゆるフェーズにおいてクイックに問題を把握する際に役に立つ手法と言えます。

2. データから見えない問題点が分かる

アクセス解析ツールを利用すれば、ユーザー数やPV数などの数値データを用いた分析ができますが、その理由づけまですることはできません。例えば、数値データによって閲覧数が伸びていないページが明らかになったとしても、なぜそのページが閲覧されていないかという理由は、データから判断することはできません。

ヒューリスティック分析では、UXのプロがサイト構造などの情報設計・デザインの一貫性・テキストの読みやすさなどを分析します。それによって、「導線が貧弱でユーザーを誘導できていない」「該当のページにたどり着くことがそもそもできていない」など、データでは見えてこない問題点を明らかにすることが可能となります。

逆に、ヒューリスティック分析の結果をアクセス解析のデータによって実証することもあります。客観的なデータを組み合わせることで、分析結果に対する信頼感を高め、より多くの人にユーザビリティ上の課題についての理解と共感を促すことができます。

3. 競合他社との比較がしやすい

ヒューリスティック分析によってサイトやアプリを分析する際には、評価項目を設定する必要があります。この評価項目を競合サイトやアプリの分析に応用することで、同じ評価軸で自社と他社のサービスを比較することができます。

同じ評価軸で分析することで、自社サイトやアプリが競合と比べてどの点が優れているのか、また改善の余地があるのか判断することが可能となります。他社サイトやアプリとの比較分析は、ユーザビリティの改善という点だけでなく、競合他社との競争というビジネス面においても効果的な方法と言えるでしょう。

ヒューリスティック分析の手順を4ステップで解説

ヒューリスティック分析の手順

では、具体的にヒューリスティック分析はどのような手順で行なっていくのでしょうか。人によってやり方はさまざまではありますが、主に以下のような手順で進めることが多いです。

  1. 分析目的の設定

  2. 分析の評価項目を決める

  3. ヒューリスティック分析の実施

  4. 課題点と改善策をレポートにまとめる

それぞれの手順について、具体的な方法を紹介していきます。

1. 分析目的の設定

最初に分析の目的を設定しましょう。ヒューリスティック分析においては、目的によって評価項目や分析結果も異なるため、達成したい成果を見据えて進めることが非常に重要となります。

分析の目的を考えるにあたって、そもそものサイトやアプリの役割に改めて立ち戻る必要があるかもしれません。例えば、ブランドイメージの浸透や拡大を目的とした企業サイトなのか、それとも製品の売上拡大や購入体験の向上を目的としたアプリなのかによって、分析の目的が異なる場合があるでしょう。商品の購入完了率やフォーム入力完了率の向上、サイトの回遊率の改善など、サイトやアプリの役割や解決すべき課題にそって目的を設定しましょう。

また、1回のヒューリスティック分析に対して、目的を複数設定してしまうと、分析の評価項目を定めるのが難しくなるため注意が必要です。1回の分析に対して目的が1つになるように絞りこんでから、分析を行いましょう。

2. ヒューリスティック分析の評価項目を決める

分析の目的が設定できたら、次のステップは分析指標を設定することになります。分析指標とは、「どんな観点で分析するか」を決めるチェック項目になります。分析指標の設定は、ヒューリスティック分析の生みの親でもあるヤコブ・ニールセン博士が定めた「ユーザビリティに関する10のヒューリスティックス」を参考にするケースが大半です。

  1. システム状態の視認性:ユーザーがシステムの状態を常に把握できるようにする

  2. システムと実世界の一致:ユーザーに馴染みのある語句や概念を使い、違和感のない順序で情報を提示するシステムを作る

  3. ユーザーの主導権と自由:ユーザーが望まないアクションを、元に戻したり中断できるような自由を与える

  4. 一貫性と標準:業界や他社製品との一貫性を保つ

  5. エラーの予防:エラーを防止する仕組みを作る

  6. 再生より再認:情報を記憶していなくても見ただけで操作がわかるようなデザインにする

  7. 柔軟性と効率性:経験の浅いユーザーも経験豊富なユーザーも、自分に合った方法を選ぶことでシステムとのインタラクションを効率化する方法を提供する

  8. 美的で最小限のデザイン:最小限で美しいデザインにする

  9. ユーザーによるエラーの認識・診断・回復のサポート:ユーザーがエラーを認識・診断・回復できるようなサポートを提供する

  10. ヘルプとドキュメンテーション:ヘルプやドキュメンテーションを用意する

ヒューリスティック分析の評価項目の例

特に分析の経験が少ない場合、評価項目はこのリストを参考に設定することができます。例えば、

  • ユーザーが一見しただけで現在のシステムの状態を理解できるか(1.システム状態の視認性)

  • ユーザーが直感的に操作できるか(2.システムと実世界の一致)

  • ユーザーが迷わずにアクションできる導線になっているか(6.再生より再認 8.美的で最小限のデザイン)

などです。分析内容によっては、多くの事柄を一度に確認する場合もあるので、上記のような評価項目に照らし合わせて、見つけた課題を逐一記録することができるようなドキュメントを用意すると良いでしょう。

3. 項目に沿って分析を実施

目的と分析指標が設定できたら、その項目に沿って分析を実施します。サイトやプロトタイプを実際に操作・閲覧しながら分析を進めていきましょう。

4. 課題点と改善策をレポートにまとめる

ヒューリスティック分析結果レポートの例

ヒューリスティック分析が終わったら、記録をもとに課題を抽出し、改善するための解決策を提示しましょう。例えば、

  • 問い合わせフォームの余計な項目を取り除き、よりシンプルなデザインにする

  • メインビジュアルとコンテンツ内容に整合性を持たせる

などです。解決策を提示する際には、必ず分析の中で発見したどの課題と関連しているか、分析に関わっていない人でも理解できるようにレポートにまとめることを心がけましょう。該当ページのキャプションとともに、課題の位置を具体的に指し示し、直感的に伝わる方法をレポートに取り入れることも可能です。

また、同様のフォーマットを用いて、競合他社との課題点の比較をすることが可能です。競合サイト・アプリの分析をともに行うことで、自社製品の改善点がより明確になるだけでなく、競合からの差別化という点を考慮したユーザビリティ改善をすることができます。

ヒューリスティック分析を効果的に行うためのポイント

ヒューリスティック分析が実施者の経験値によって分析結果が左右される可能性があることに常に留意しましょう。複数名で分析を行うことで、偏りは解消されることが期待できます。できる限り複数の実施者が個別に分析を行った結果をまとめて課題や改善点を抽出すると良いでしょう。

また、自社で分析を行うことも可能ですが、なるべく経験豊富なUXのプロに分析を依頼することも効果的な分析を行う上でのポイントです。プロの知見を取り入れることはもちろん、開発に関わっていない第三者として、より客観的な視点での偏りが少ない分析が期待できます。

ヒューリスティック分析の限界。ヒューリスティック分析では、サービスの提供価値は測れない

しかしながら、ヒューリスティック分析にも限界はあります。分析の手法・評価軸は、あくまでユーザビリティを評価するためのものであり、サイトやアプリの目的や、サービス自体の提供価値について計測し、改善点を発見するには適切な手法とは言えない点です。

言い換えれば「どのように作るか」といった議論に対して有効的な手法であるのに対し、「何を作るか」といった議論に対しての材料や答えを提供することは、ヒューリスティック分析の役割とは言えません。「サービスの提供価値をどれくらいユーザーに届けることができているか」また「提供価値がユーザーの希望やニーズにどれくらい即しているか」を考える際には、ユーザーインタビューをはじめとした他の手法を用いる必要があるでしょう。

まとめ

ヒューリスティック分析は、サイトやアプリのUX/UI上の改善点を見つけるための代表的なユーザビリティ評価手法です。目的に即した分析によって、効果的なUX/UIの改善をすることができれば、ユーザーにとってよりストレスの少ない体験を提供することができ、PV数・コンバージョン率のアップといった数字の成果にもつながります。

ヒューリスティック分析はその評価軸がある程度確立されているため、気軽かつクイックに分析を行うことができることが大きな特徴です。新たなサイトやアプリを開発したとき、自社サイトやアプリのPV数やコンバージョン数が伸び悩んでいるとき、またデザインをリニューアルするとき、まずはヒューリスティック分析を行うことからはじめてみてはいかがでしょうか?

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