
今回は、デザイナーの集まるコミュニティ「Designer's HYGGE」の運営に携わる川村将太さんに、「デザイナーとコミュニティ」についてお話を伺いました。デザイナーにとってコミュニティは必要なのか? 参加するための課題とは? たっぷりお話いただいてます。
経済学部を卒業後、新卒で事業会社に入社。UXデザイナーとして戦略やマーケティングを重視した体験設計を担当。現在は、モビリティ系の会社にてExecutive AI Directorとして全社AI戦略検討・推進。同時にフリーランスでは、Experience Designerとして企画・デザインプロセスへの生成AI活用そして、AIとユーザーの包括的体験設計などに携わる。
「Designer's HYGGE」とは
https://designershygge.studio.site/
「Designer's HYGGE」はデザイン好きが集まって会話を楽しむコミュニティ。経験や年齢は一切不問で、デザインにまつわる雑談を楽しむ集まりです。毎月末、20時からオンラインワークスペース「Nework」上で開催されており、テーマごとに話したい人・聞きたい人が集まって会話に参加しています。
Designer's HYGGEってどんなコミュニティ?
―― Designer's HYGGEではどういった話題が盛り上がりやすいのでしょうか?
「会社の1人デザイナー」が集まるようなバブル(テーマごとに区切られた小部屋のようなもの)は盛り上がることが多いですね。夜中だとお酒も入ってることもあり、キャリアとしてのぶっちゃけ話など、コアなメンバーで盛り上がっています。
―― 参加者からの意見はどのようなものが多いですか。
公式サイトにも記載されていますが、
「ゆるい空気で話すけどハッとさせられる」
「おたがいその場で交流し合って尊重しあう雰囲気がある」
などとお声をいただくことがあります。
代表の荒砂智之さんが掲げる「あたたかさを持ったコミュニティ」というコンセプトが、伝わっているようで嬉しいですね。
―― 現在までDesigner's HYGGEは何回くらい開催しているのでしょうか?
40回以上開催しています。コロナ禍で、人と人が雑談ベースでつながる機会が薄れていた時期に始まりました。
―― Designer's HYGGEに参加したきっかけも教えてください。
前職では外部のデザイナーとのつながりが持てておらず、解決できない不安が溜まっていた中で存在を知りました。Designer's HYGGEが今後の運営方針を模索していたタイミングだったようで「盛り上げられたら」と思い荒砂さんに声をかけたのがきっかけです。
コロナ禍でリアルのつながりが少なくなった中で、「明日も頑張ろう」という思いを後押しできるコミュニティって無いなと思ったのもきっかけかもしれません。
―― 川村さんのDesigner's HYGGEでの役割はどういったものでしょうか?
企画の考案が中心ですね。今までのDesigner's HYGGEは雑談ベースで進めていましたが、雑談に加えてゲストを招いてトークテーマを決めて話してもらっています。どんな人を呼ぶかといったセッティングから、当日のファシリテーションも共同で行います。あと荒砂さんとDesigner's HYGGEをどうしていこうか、という方針策定もしています。
―― ゲストトークの内容はポッドキャストでも公開されていますね! ポッドキャストの発案は川村さんからでしょうか?
荒砂さんと「ゲストトークを何かしらの方法でアーカイブしたい」と話した結果ですね。登壇するゲストの方に“持ち帰りの粗品”的にお渡しできる点もいいかなと。書き起こしなどよりも、労力をかけずにDesigner's HYGGEへの接 点を増やせる点もあり、ポッドキャストの公開に至りました。
―― 「Designer's HYGGE」を運営している上での発見などがあれば教えてください。
荒砂さんのスタンスからは学ぶことが多いです。コミュニティを運営する上で「小さくても火を灯し続ける」という意識は、とても参考になっています。自分もコミュニティ運営では続けること、継続させることが大事だと思っているので。
デザイナーが横のつながりをつくる上での課題とは
―― デザイナーが横のつながりを作る上での課題は何だと思いますか?
デザイナーさんはいい意味でこだわりが強い方が多い印象で、居心地の良いコミュニティにこもりがちなのは課題に感じます。ここ2年間で規模の大小や公開・非公開を問わず、さまざまなイベントに参加しましたが、その場にデザイナーさんが全く参加されていないということが多々ありました。
―― デザイナーが外のコミュニティに出るのに必要なものは何でしょうか?
今いるコミュニティの外に出るには、“居心地と知識”という2つの壁を超えなくてはならないと思っています。今の居場所の心地良さと、自身が築いてきた手法や知見というコンフォートゾーンから抜け出す必要があるので、ちょっとしたきっかけや勇気が求められるかもしれません。自分の場合は、当時の先輩がUX界隈で登壇などの経験もある方で、「イベントに登壇してみない?」と誘ってくださったおかげで広がりました。
―― その先輩の存在は大きいですね。
踏み出すには、アシストしてくれる人、連れて行ってくれる人がいれば、ベストだと思います。不慣れな状態だと、つないでくれる機会や人がいないと厳しいかもしれませんね。
―― 外部の刺激に慣れない方、飛び出す勇気がまだ持てないという方へのアドバイスなどはありますか?
コミュニティを持つことで、自身の思考をアップデート していけると思います。もちろん、取引先や会社内よりは交流するハードルが高いので、意識の変革が必要かもしれません。交流することで、自社内では円滑にしているつもりでも「外のほうがイケてそうだぞ」「こっちも頑張っているのにな」と、落ち込むこともあります。ただ、ずっと情報を浴びると耐性がついてくるんです。
―― なるほど。とにかく情報を浴びて慣れさせる、と。
もちろん、浴びるだけではなく思考の枠組みをアップデートするのは必要です。そうしないと情報が右から左に流れるだけになってしまうので。
横のつながりがあると課題も共有できる?
―― 横のつながりがあることで共有できる課題は何でしょうか?
1人で抱えているモヤモヤを解決できる点だと思います。自分のことを相対的に捉える、メタに捉える機会をどう作るかは重要かもしれません。
―― なるほど。
正社員で小さな会社に入ったデザイナーさんのエピソードなのですが、自分が考えていることや行動が周りからどう思われるか、成長が実感できなかったそうです。
この人のように、キャリアをどうしたら良いのか、自分の状態はどうか、メタに捉えるためには横のつながりがないと難しい。他者の厳しい評価からではなく、自己の課題をやさしく相対的に捉え認識するのに、横のつながりが重要だと思います。
コミュニティがある必要性とは?
―― デザイナーにとって、コミュニティがある必要性は何でしょうか?
何かを設計する・作る人とつながっていると、デザインの意欲やインスピレーションに影響すると思います。生の情報が入ってこないと、自分のレベルやデザイナーとしての立ち位置を相対的に知ることが難しいのではないでしょうか。
デザイナーとしてのアンテナの立て方や一歩踏み込んで情報を取得する能力が無いと、作業者に成り下がってしまうかもしれません。
―― なるほど。
ミドル〜シニアデザイナーになると、他の組織から得た情報をメタな視点で見れると思います。自分の持っているフレームワークにアップデートを掛けられるというか。それを早く、さまざまなソースから得るためにコミュニティが必要なんだと思います。
―― 駆け出しのデザイナーやミドル未満の方にとってもコミュニティは必要でしょうか?
業務上やキャリアの不安を解消するためには、やはり同業者とのつながりは大事だと思います。
―― キャリアに問わず、コミュニティや交流はデザイナーに必要なんですね。
個人的にイケてるなって人は、自発的、もしくは無意識的に外部との交流を持っている人が多い気がします。デザインに閉じずにいろんな方と交流して、デザイン以外の視点を持っているなという印象を受けることが多いです。
複数のコミュニティ運営に携わる川村さん。運営で心がけていること、運営することに対する思いは?
―― 現在、川村さんは「Designer's HYGGE」以外にもさまざまなコミュニティ運営に携わっておられるそうですが、何か心がけていることはありますか?
共感できるコミュニティには積極的に立ち寄る、というのは心がけていますね。気軽にDiscordなどで入れるイベントとかはすぐに参加してみて、コミュニティの思想などを味わっています。
―― 参加したコミュニティでは、どのような部分を見ていますか?
コミュニティが目指しているところは意識して見ていますね。ちょっとでも「いいな」と思ったら、自分が既存のコミュニティで何かできるかと考えるきっかけになります。
―― 他にも心がけていること、思いのような部分もお聞かせください。
少し偽善的になるかもしれませんが、利他的な気持ちを抱いて行動しているところはあります。コミュニティを運営することで自分のキャリアや儲け話につなげる、という思いは一切ないですね(笑)。「長期的になにかいいことがあればいいなあ」ぐらいの気持ちです。
自分自身は就職してからデザイナー職に触れて、そこでコミュニティーに参加する楽しさを知れたので本当に恵まれていると感じました。
―― どんなところが「恵まれている」と感じられたのでしょうか?
当時の先輩に、新しいコミュニティに連れて行ってもらって刺激を受けた経験が大きかったですね。
自分はデザインという営みが好きなので、デザイン業界に恩返ししたいという気持ちが強いのかもしれません。
―― 「Designer's HYGGE」の話に戻りますが、どのような方に参加してもらいたいでしょうか?
デザインに興味がある人であればウェルカムです。キャリアに必要という話もしましたが、ちょっと孤独を感じている人が気軽に立ち寄ってくれれば。大きいイベントやコミュニティに飛び込むのは勇気がいると思うので、「Designer's HYGGE」はその手前でいたいと思っています。「明日も頑張ろう」「こういう人もいるんだ」と視野が広がるような、コミュニティづくりをしていきたいですね。Hyggeという雰囲気 をつくるときに、心を開いて歩み寄ってくれる人、自分たちのHyggeに共感してくれる人が一人でも仲間になってくれればと思っています。
―― 今日はお話をありがとうございました!
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