
近年の人工知能(AI)の進化は驚異的であり、特にデジタル技術の進歩を推し進めています。最近では、無料で使えるDALL•EやChatGPTなどのAIツールが登場し、AIが広く一般に認知されるようになってきました。もはやAIは未来の話題ではなく、現代の私たちの生活に深く根付いています。
Nokoです。メルボルン在住のプロダクトデザイナーで、リモートで仕事をしています。 過去8年間は、ブランド戦略、エクスペリエンスデザイン、ビジュアルデザイン、モーションおよびイラスト、アクセシビリティデザインなどのデジタルデザインの様々な分野で仕事をしてきました。現在は、Two Bulls/DEPTでシニアプロダクトデザイナーとして、様々な国際的なデザインプロジェクトに取り組んでいます。
私の働く会社でもこの革新的なテクノロジーを取り入れ、子供たちが安全かつ簡単に絵本を作れるプロトタイプを今年制作し、先月公開しました。このプロトタイプは、DALL·EやChatGPTを駆使した技術が鍵となっています。
The Magic Storybook (https://www.twobulls.com/projects/the-magic-storybook)
このプロトタイプでは、ユーザーとなる子供たちが想像力や創造力、そしてユーモアを発揮し、自動的に絵本を作成することができます。さらに、ユーザーはテキストを編集するか、DALL·E 2によって生成された画像を変更することで、絵本のストーリーをカスタマイズすることもできます。さらなる特徴として、このプロトタイプにはAIが生成した効果音や音楽も組み込まれており、ストーリーをより鮮明に伝える助けとなっています。
私はこのプロジェクトに、UXUI・ゲームデ ザイナーとして参加しました。そして、プロジェクトを進める中で3つの重要なことを学びました。
一つ目は、プロジェクトの成功にとってプロンプトの質が重要であることです。そのため、私たちはプロンプトの制作に力を注ぎました。二つ目は、AIツールをアートディレクトすることが大切であることです。DALL·E 2は、特定の著作権のあるデータセットから派生したコンテンツを使用して画像を生成するため、私たちはDALL·E 2を正確にアートディレクトし、著作権フリーのコンテンツを使用して、統一感のある画像を作成するように努めました。三つ目は、AIがデザイン分野を含む多くの業界で混乱を引き起こしていること、そして私たちデザイナーの働き方を大きく変える可能性があることでした。
https://labs.openai.com/
このプロジェクトに関わることは、私のこれまでのデザインに対する見方を変えるきっかけとなりました。私は、AIがデザイナーの仕事を奪うのではなく、AIは私 たちがよりクリエイティブな仕事に集中できるようにしてくれると感じています。デザイナーは、AIが生成したアイデアを受け取り、それを改善し、洗練させることができます。これは、より高品質でクリエイティブな成果物を生み出すことにつながります。AIがデザイン業界を変える可能性は無限大であり、私たちはこの未来に向けて準備をしなければなりません。
今回は、前編記事で私たちがプロジェクトで学んだプロンプトの質の向上方法やAIツールのアートディレクション方法についてご紹介し、後編でAIツールがデザイン業界に与える影響や、デザイナーが今後どのようにAIと協力していくべきかについて探求したいと思います。
AIを使ったデザインの鍵を握る! プロンプトとは何か?
ChatGPTのスプラッシュ画面
AIツールを使う時には、プロンプトに注意が必要です。何を伝えるか、どのように伝えるかによって、AIがどのような応答を返すかが大きく変わってきます。つまり、プロンプトの質はAIの応答に大きく影響するのです。
そこで、デザインの世界でも同じように、プロンプトの質がとても重要となってきます。例えば、「シンプルなデザインを作って」というプロンプトでは、どの程度のシンプルさを求めるかが曖昧で、AIが生成するデザインの質も不確定になってしまいます。
逆に、「操作性を高めることを目的として、シンプルなユーザーインターフェイスを作成して」と明確なプロンプトを与えることで、AIに必要な情報を正確に伝え、期待するデザインを生成させることができます。プロンプトは、AIにとって「教科書」のようなものです。良いプロンプトを作成することで、AIの応答の品質を高め、プロジェクトの成功につながるのです。
高品質プロンプトの極意とは?
よりクオリティの高いAI生成物を得るためには、適切なプロンプトの使用が不可欠です。プロンプトはAIツールがどのような情報を生成するかを決定するため、タスクや質問を明確にし、具体的で簡潔な言葉を使うことが重要です。こうすることで、AIツールが入力を正しく解釈し、目的の結果を提供できるようになります。AIを最大限に活用するためには、プロンプトの作成に注力する必要があるでしょう。
https://www.fiverr.com/
最近はプロンプトの重要性が増し、それに伴ってプロンプトを書くフリーランサーの需要も高まってきています。実際にFiverrなどのフリーランスプラットフォームでは、AIツールを使用するための適切なプロンプトを提供することを専門にしている人たちが多数登録しています。Fiverr上でのプロンプトライターの提供サービスには、多言語対応や業界特化型のプロンプト作成などがあり、様々な要望に対応しています。AIツールの需要が高まる中、プロンプト作成の需要も高まっているようです。
明快で具体的なプロンプトがAIの力を引き出す!
プロンプトは、端的かつ明快であるべきです。また、具体的なタスクや問題を含めることで、AIは意図を正確に解釈し、適切な答えを導き出すことができます。AIは完全ではなく、複雑な文法や表現を扱うことが難しいため、分かりやすく簡潔な言葉でプロンプトを表現することが重要となります。もしもAIの力を最大限引き出したいのであれば、具体的でわかりやすいプロンプトの作成に力を注いでみましょう!ここでは、効果的なプロンプトを書くためのポイントを紹介していきます。
背景情報を提供しよう
AIには人間が持つような経験や知識がないため、背景情報が欠けていると正しい回答を提供することができません。例えば、新しいアプリを開発する際には、同じ分野の競合他社のアプリや、類似するアプリの機能や特徴、市場動向などの情報を収集することが重要です。
例えば、デザイナーがアプリの購入手続きに関する問題を解決したい場合、現状の状況や背景情報を詳しく説明することが重要です。このようにすることで、AIは正確な情報を得て、適切な回答を提供することができます。
例えば、
私たちのアプリには、ユーザーが商品を購入する際に複数の画面を進む必要があります。顧客の情報を収集するために多くのステップが必要なことが挙げられますが、これを減らすことはできますか?
というプロンプトに対する回答がこちらです。
このようにAIに十分な情報を提供することで、より正確な結果を得ることができます。背景情報を提供することで、AIがより賢く振る舞うことができるのです。
次に具体的な例を加えてみよう!
AIが意図を正確に理解し、適切な回答を提供するためには、明確で具体的なプロンプトが必 要です。あいまいな言葉や曖昧な表現を使わず、具体的で明快な質問をすることで、AIはより正確な回答を生成できます。また、情報を豊富に提供することで、AIはより詳細な分析や実用的な提案を行うことができます。つまり、具体的で情報が豊富なプロンプトがAIとの効果的なコミュニケーションの鍵となります。
例えば、「最近のプロジェクトで顧客とのコミュニケーションが上手くいかなかった場合、改善する方法はありますか?」という具体的な質問は、AIが正確な回答を提供できるような情報を提供します。逆に、「ビジネスコミュニケーションの改善方法はありますか?」といった一般的な質問は、AIにとっては曖昧であるため、正確な回答を提供するのは困難です。
では先ほどの質問に具体的な例も加えてみましょう。
私たちのアプリには、ユーザーが商品を購入する際に複数の画面を進む必要があります。しかし、ユーザーからは「購入手続きが長くてストレスがたまる」というフィードバックがあります。この問題を解決するためには、どのような方法がありますか?顧客の情報を収集するために多くのステップが必要なこと が挙げられますが、これを減らすことはできますか?
このプロンプトに対する回答がこちらです。
このような具体的な例がある場合、AIは顧客情報を収集するためのより具体的なアドバイスや、より良い解決策を提供することができます。そして、AIが提供するアイデアはより実践的で、より現実的な解決策になる可能性が高くなります。
人間にとっては当たり前な情報もAIにとっては重要
AIが本当に輝くのは適切なコンテキスト(文脈)が与えられた時です。例えば、AIにレストランのレビューを生成するよう依頼する場合、そのレストランのカテゴリーや場所、価格帯などの情報を提供することが重要です。そうすれば、AIはそのレストランに最適な言葉を選び、読者にとって役立つレ ビューを生成することができます。つまり、AIがより正確で有用な情報を生成するためには、コンテキストを提供することが欠かせません。
AIとのコミュニケーションにおける「一貫性」の重要性
ChatGPTを使用する際には、一貫性もとても大切です。プロンプトで一貫した言葉と用語を使うことで、ChatGPTが生成したい内容を正しく理解し、回答の明確性、正確性、そして分かりやすさを高めることができます。
プロンプトの文章に一貫性が欠けると、同じ用語や概念に対して異なる言葉を使って混乱を招くことがあり、AIの解答が誤解や誤った解釈を生み出す可能性があります。しかし、一貫性を持たせることで、AIは同じ言葉が同じ概念を指すことを期待するため、混乱することが減ります。さらに、一貫した用語や言葉を使うことで、AIは回答を明確に表現し、正確な情報を受け取ることができるようになります。
デザイナー用語は要注意!
AIに正確な回答を得るには、専門用語やスラングは避けた方がよいとされています。例えば、デザイナーの場合、ヒアリング(ユーザーインタビューをすること)、ローファイ(低解像度や手書きのものを指す)、スプリント(1週間から1か月程度の期間でアイデア出しやプロトタイプ作成を行うデザイン手法)などの専門用語やスラングを使用すると、AIが混乱する可能性があります。どうしてもこのような用語を使いたい場合は、英語でプロンプトを作成した方が回答の精度が上がります。
ChatGPTが「日本語」と「英語」で異なる理由とは?
ChatGPTの回答は日本語で質問した場合と、英語で質問した場合で異なります。これは、トレーニングに使用されるデータセットの言語が異なることが主な理由となります。ChatGPTが「日本語」と「英語」で異なるのは、トレーニングに使用されるデータセットが異なるためです。日本語のChatGPTは日本語テキストでトレーニングされ、英語のChatGPTは英語テキストでトレーニングされています。さらに、日本語と英語の言語構造にも差異があるため、応答品質にも差異が出ます。例えば、日本語は主語を省略することができるため、文脈を正確に理解することが重要です。また、日本語には敬語や、文化的な表現、略語や俗語の使用など独自の文化的要素があるため、ChatGPTが日本語の文化や社会的背景を理解することも必要です。
もっと賢い応答を得るために、プロンプトを鍛えよう!
プロンプトを改善するためには、テストと反復が必要です。異なるプロンプトバリエーションを試して、GPTの生成された応答を比較し、最適なものを選択することが肝心です。これにより、GPTが最高品質の応答を生成できるよう、プロンプトの品質を向上させることができます。あなたのプロンプトを鍛え、GPTの驚くべき能力を最大限に引き出しましょう!
