インタビュー

「タイミー」のプロダクトデザイナーが公開した「自分の取扱説明書」。 社内における自己開示の大切さとは?

「タイミー」のプロダクトデザイナーが公開した「自分の取扱説明書」。 社内における自己開示の大切さとは?

新しい環境に身を置く際、自身の仕事の進め方が周囲と合わなかったり、 顔合わせの度に自己紹介を繰り返したりとストレスを感じる方も多いかもしれません。

スキマバイトアプリ「タイミー」でプロダクトデザインのマネージャーとしてご活躍中の横田泰広さんは、22項目にわたる「私の取扱説明書」を作成。

  • コミュニケーション・態度

  • 効率化・プロセス改善

  • 過去に受けたフィードバック

など、自身の仕事に対する姿勢や進め方などをまとめています。「取扱説明書」を開示することによる反響は? なぜ「取扱説明書」の作成に至ったのか? 自己開示が社内コミュニケーションにいかに重要かを伺いました。

横田泰広さん
今回話を聞いたデザイナーさん
横田泰広さん

学生時代にWebデザイン会社を経験後、新卒で行政機関に勤務。ワークスアプリケーションズ、TERASSなどのITベンチャー、自身のデザイン会社などを通じ、プロダクトデザイン、ブランディング、開発、PMなどを経験したのち、株式会社マイベストでデザイン責任者としてデザイン組織、デザインリサーチ、リブランディング、アプリ開発などを推進。グロービス経営大学院卒業。 現在は株式会社タイミーでプロダクトデザインマネージャー。

まとめて“どういう人か知ってもらう”ための「取扱説明書」

横田泰広さん

―― 早速ですが、「取扱説明書」を作ろうと思った経緯をお聞かせください。

まずは、メンバーに自分のスタイルや考えを知ってもらいたいという思いがありました。

これまでタイミーを支えてきたメンバーたちにとって、私は外からやってきたマネージャーです。当然「新しいマネージャーはどんな人だろう」という不安な気持ちがあるだろうと想像していました。そこで、自分の「取扱説明書」を作成し、今後の発言や行動の根底にある自分の考えをあらかじめ伝えておきたいと思ったんです。加えて、リモートワークを採用している組織の中で、メンバー一人ひとりに同じ話を繰り返すことなく、まとめて伝えるという狙いもありました。

ーー 伝える手段はいろいろあると思うのですが、あえて「取扱説明書」とした理由は何だったのでしょうか?

「Work with me」というタイトルの文章があって、それを読んだ際にインスピレーションを受けたのがきっかけでしょうか。

マネジメントをやっている中で、双方の「知りませんでした」を防ぐためにしっかりと伝えるのは大切ですが、効率的には大変ですよね。お互いに共通の認識に至るのが遅くなったときの虚しさも経験しているので……。それを防げたらと思ったのが一番大きかったかもしれません。

―― そこで「取扱説明書」という形を取ったのですね。

あらかじめ文章にしておくことが大切だと思うんです。あえて「取扱説明書」を作らずに口頭でコミュニケーションを取ることもできるのですが、個別に伝えていくと断片的になってしまい、情報量に格差ができてしまいます。取扱説明書で自己開示することで、これから入社する人に対しても「どういう考え方のマネージャー」なのか、早期に共有して把握してもらいやすいと考えました。

―― 「取扱説明書」の項目が非常に細かくて驚きました。

あらゆる状況を想定して漏れがないように意識して制作しています。

横田さんの「私の取扱説明書」の項目

  1. コミュニケーション・態度

  2. 知識・情報

  3. 効率化・プロセス改善

  4. 組織・成果

  5. 過去にマネージャーとして受けたことのあるフィードバック

  6. マネージャーの役割

    1. 一貫性

    2. 関与度合い

    3. 関与範囲

    4. 論理 vs 直感(コミュニケーション編)

    5. 論理 vs 直感(デザイン編)

    6. 評価・目標

  7. 会議

    1. 文書主義

    2. アカウンタビリティ

    3. 価値

    4. 完璧 vs 途上

  8. コミュニケーション

    1. 前提

    2. 1on1

    3. フィードバック

  9. ワークライフバランス

  10. プライベート

―― なにか元にしたものはあるのでしょうか?

決済サービスStripeの元COO、Claire Hughes Johnson氏が作成した「Working with Claire: an unauthorized guide」が元ネタで、自分なりに足していきました。

足した内容としては、前職の経験も含めて、メンバーとマネージャーとの間で口頭で伝えていたことを中心にしました。

デザイナーとしての人格とマネージャーとしての人格。あとは上司・同僚としてのコミュニケーション方法、意思決定の基礎になることを考えて書きました。

Working with Claire: an unauthorized guide

元ネタとなった「Working with Claire: an unauthorized guide」

―― 「取扱説明書」に対する反響もお聞きしたいです。

デザイナー以外の職種の方への自己紹介を兼ねて全社的に公開しました。複数人から「じっくり読みました」と非常にポジティブな反響をもらえたのはよかったですね。また、他社の方にも公開する機会があったのですが「あえて話題にならないようなことがしっかり書かれていて、コミュニケーションで悩むことが減りそう」という言葉をもらうなど、関心を寄せていただきました。

―― 公開したことで実感したメリットを教えてください。

プロトコルを共有するメリットはあると思います。自分のことが理解されていないと「強く言っているけど否定しているわけではない」といったニュアンスも伝わりづらいですよね。過去にもらったフィードバックも公開しているので、自分としては「フィードバックもきちんと受け入れるよ」というメッセージも込めています。

unprintedのオリジナル記事をメールで受け取る

メールマガジンでは、オリジナル記事や最新ニュースをメールで配信中

※登録ボタンを押すと利用規約に同意されたものとします。

unprintedニュースレター登録

文字起こしとAIで作成! 「遅かれ早かれ」なら最初から

―― こちらの「取扱説明書」はかなりの長さですが、どれくらいの期間で作成したのでしょうか?

2時間くらいで書き上げました。

―― それはすごいですね!

音声入力でバーっと喋って、文字起こしされたテキストをAIに投げているので、そこまで手間はかけていません。

―― 過去に受けたフィードバックも盛り込まれていますが、フィードバックの改善についてはいかがでしょうか?

どんな人間でも、フィードバックを受けてすぐに改善するのは難しいと思います。クセのような部分は遅かれ早かれ露呈してしまうもの。それであれば、最初から「言わないと勝手に解釈されてしまうだろうな」という部分を潰しておこうと考えました。「自覚しているよ」というメッセージを込めています。

―― たしかに「遅かれ早かれ」というのは真理ですね……! 既存のメンバーにも安心してもらえそうです。

特定の会社で長く働き続けるためにはフィードバックを受けた上で、自分の苦手なことや無自覚な癖などに向き合うことも大切になってきますよね。そういう謙虚さ、向き合っていく姿勢も大事だと思います。

社内コミュニケーションで自己開示することは重要?

横田泰広さん

―― 社内コミュニケーションで自己開示することの重要性もお聞かせください。

1人で仕事が完結することはありません。

デジタルプロダクトを作っている会社だと、状況の移り変わりが激しく価値を届けるべき顧客が多様であることが多いので、一緒に働く人との密な連携が不可欠ですよね。

前提として「どういう個性を持っているのか」「どういう考え方を持っているか」は、相互理解の基本になると考えています。

―― 最後に、タイミーの文化についてもお伺いさせてください。

タイミーでは個人の自律的な働き方をすごく重視しています。それはマネージャーの私もそうだし、他のメンバーでも変わりません。非常に個人のモチベーションやスタイルを、会社としてポジティブなものと捉えているんです。

自分の挙げた「癖」のようなものも、良い面と悪い面双方を活かしていく文化があると思っています。

チームビルディングにはすごく時間がかかるわけですけど、メンバーのインフォーマルな事柄もチームにおいては重要なもの。私としては「取扱説明書」は続けていきたいなと思っています。「取扱説明書」のような自己開示を他の人もやっていく流れができるといいですね。

まとめ

タイミーについて横田さんは、「タイミーは1つのミッションに向けてそれぞれなりの貢献をしていく、そういった姿勢や思考が強い組織」ともおっしゃっていました。チームを作る一員として働く上でも大事な「自己開示」。口頭ではなかなか伝えづらい事柄もある上に情報にも偏りが出てしまうところを「取扱説明書」として共有するアイデアは素晴らしいですね。

インタビュー
コミュニケーション
執筆荒井啓仁

関連記事

Related Articles

最新の記事

Latest Articles

デジタルデザインの最新情報をお届け!

unprintedのメールマガジンにご登録いただくと、デジタルデザインの最新情報をメールで受け取ることができます。今までに配信したバックナンバーも公開中!

※登録ボタンを押すと利用規約に同意されたものとします。