
世界各地で魅力的なデザインを探す旅、今回は台北市を拠点とするデザインブランド「KAMARO'AN(カマロアン)」をご紹介します。
フリーランスのデザイナー/フォトグラファー。 グラフィックデザイナーとして6年勤務、ロゴ・パッケージ・書籍など幅広く携わり、自身で写真も撮り始める。 旅好きで各国を訪れながら興味関心であるデザインや社会問題を調査しています。
KAMARO'AN(カマロアン)のものづくり
KAMARO'AN(カマロアン)は、2015年に台湾で誕生し、台湾原住民アミ族の文化を研究するデザインブランドです。
原住民に伝わる伝統的な手仕事を現代に再構築し、自然由来の素材や技法を用いてオブジェクトを制作しています。
https://www.kamaroan.com/posts/about
https://www.kamaroan.com/posts/about
"KAMARO"は、台湾原住民のなかで一番人口の多いとされるアミ族のことを表しており、現地の言葉では"生きる場所"を意味します。
アジア新進デザイナーとしてパリの家具見本市で選出され、2018年以降、ニューヨークのMoMA(Museum of Modern Art)デザインストアでは三角織りバッグがベストセラー商品となるなど、そのオブジェクトの美しさは世界的に注目されています。 100%台湾綿を使用した三角織りバッグは、日本統治時代に東海岸で原住民が使用していた米を運ぶための袋からインスピレーションを受けたものです。
https://www.instagram.com/p/BhW3kVVB-6I
こちらは「アトモ」と呼ばれる伝統的な水を運ぶ陶器の形から着想を得たバッグ。
https://www.instagram.com/p/CsBsonjP5sn/
古代のオブジェクトからは、当時の生活様式に合わせた機能性や、価値観、美の哲学を学ぶことができます。
インスピレーションの源、古代の陶器たち
すべてのオブジェクトは、KAMARO'AN(カマロアン)のスタジオで手作りされています。
台北市にあるスタジオには土日のみ予約なしで訪れることができました。
KAMARO'AN(カマロアン)スタジオ内
台湾先原住民とは
台湾には古くから多くの先住民族が暮らしており、タイヤル族、サイシャット族、ブヌン族、ツォウ族、ルカイ族、パイワン族、プユマ族、アミ族、タウ族、の大まかな9つに分類されま す。
それぞれの民族は、独自の言語、文化、信仰、伝統的な生活様式を持っており、彼らの間でも細かい差異が存在します。 17世紀に漢民族が台湾に大量移住する以前、少なくとも4000年前から原住民族は台湾に居住していました。
1980年以降、台湾の社会的変化に伴い、部族から若者が流出し、多くが都市部で生活するようになったことでその伝統文化の存続が危惧されています。
近年では、台湾原住民の権利と文化の保護が注目され、彼らの文化の復興と地位向上のための取り組みが盛んに行なわれるようになっています。
伝統を守るために、デザイナーにできることは?
多くの国でも技術の継承者不足や需要の変化、大量生産品との競争な ど、伝統文化の継承には多くの問題を抱えています。
伝統を守るためにデザイナーが果たすべき役割は、単に伝統を再現するだけでなく、それを現代の人々に魅力的に伝えることにあります。
古来の技法や素材を尊重しながらも、現代のテクノロジーを使い、ライフスタイルやニーズに合わせた新しい形や機能性を付加することで、伝統工芸は新たな価値を生み出すでしょう。
KAMARO'AN(カマロアン)はまさに台湾原住民であるアミ族の伝統とデザインの結びつきによって、それを体現しているブランドでした。
スタジオを訪れる際には、台湾原住民の暮らしや文化人類学をより深く知ることのできる順益台湾原住民博物館と合わせて訪れてみてください。
参照
フリーランスのデザイナー/フォトグラファー。 グラフィックデザイナーとして6年勤務、ロゴ・パッケージ・書籍など幅広く携わり、自身で写真も撮り始める。 旅好きで各国を訪れながら興味関心であるデザインや社会問題を調査しています。
https://miyuki-horino.com