
「デザイナーからPdMに」というキャリアパスについて、最近よく話題に上がるようになってきました。しかし、「PdMになろう!」というような意識的なキャリアチェンジは稀で、「最近デザイナーっぽい仕事しなくなってきたけど、これってもしかしてPdM?」というような、仕事内容と責任範囲の変化によって自然とPdM化しているデザイナーが多いのではないでしょうか?
デザイナーがビジネス的な領域まで見通してデザインをするようになってくると直面する、「私の仕事ってまだデザイナーなのかな?」という疑問。このような疑問を抱えていたり、デザイン的な観点や手法だけでは自身が取り組む課題解決のための引き出しが足りないと感じたら、PdM(プロダクトマネージャー)へのキャリアチェンジを考えてみても良いのかもしれません。
だんだんPdMっぽくなってきたかも…と感じたら
デザイナーとPdMという職種の間で悩み始めたみなさんにおすすめの書籍が、先月日本語訳版が発行された『UX実践者のためのプロダクトマネジメント入門』です。
PdMとデザイナーの違いやPdMのリアルな一日の仕事内容から、ファネル分析をはじめとした実践的なプロダクト改善手法まで、デザインのバックグラウンドを持つ方々には特にわかりやすい形でPdMの仕事内容を解説してくれています。
※同書内では、「プロダクトマネージャー」の略称をPMとして表記していますが、本記事内では、「プロジェクトマネージャー」との混同を避けるためにPdMと表記しています。
デザイナーとPdMの線引きに果敢に取り組むことで、わかりやすい視点を提供してくれる
「何がPdMであり、何がPdMではないか」や「何がデザイナーであり、何がデザイナーではないか」といった線引きは、プロジェクトや状況によっても異なる上、一歩間違えば批判の対象ともなりそうなものです。
ただ、UXデザイナーからPdMへのキャリアチェンジを考える身としては、ある程度明確な指針が欲しいですよね。『UX実践者のためのプロダクトマネジメント入門』において、著者であるクリスチャン・クラムリッシュ氏は
でも、線引きの何がわるい!線を引くことで、物事が明確になる。境目をはっきりさせたくない気持ちはわかるが、区切りないままではコラボレーションする部分と意思決定の部分がごっちゃになって混乱を招くことになる。
『UX実践者のためのプロダクトマネジメント入門』p. 191
として、それぞれの職種で求められるスキルセットのマッピングや具体例を通してPdMとUXデザイナーの棲み分けの方法を提示してくれています。
これが、デザイン分野に身を置く読者にとってはとてもわかりやすいものとなっており、自身が取り組んでいる業務がどの程度PdMの業務に近いかであったり、今後PdMとしてのスキルセットを強化していくために勉強するべき分野といったものが明確に理解できると思います。
PdMのかなりリアルな一日を紹介していて、自分に合っているか考えるヒントに
また同書ではデザイナーとPdMの違いを明確にする上で、多くの具体例を通して読者 が「本当にPdMになりたいか」を考える機会も与えてくれます。
フリーランスPdMの一日、企業PdMの一日、成長ステージ担当PdMの一日など、実際のPdMの一日のスケジュールや業務内容を紹介することで、「思っているよりもデザイナーとしての一日との違いが多い」ことも見えてきます。
同書を読むと、「やっぱりPdMはやりたくないかも」と感じるデザイナーも少なくないのではと思います。デザイナーからPdMへのキャリアチェンジはしないという決定をする場合においても、PdMというキャリアパスも考慮した上で、自身の向かいたい方向性をはっきりさせるために重要な視点を提供してくれます。
その上でもPdMの仕事に興味が持てるというような場合には、自信を持って次の一歩を踏み出す勇気も与えてくれるのではないでしょうか?
とはいえ、PdM的なビジネス視点はデザイナーにも理解が求められる
キャリアパスという観点では、それぞれの職種の違いはできるだけはっきり提示して欲しいもの。とはいえ実務上はその境界線は結局曖昧で、最近はデザイナーにもビジネス的な視点が強く求められるケースも多くなっています。
UX出身者から見たPdMをテーマとした同書では、デザイナーにも取り組みやすい形を想定してPdMの手法を紹介してくれています。
特に第7章「実験を通して仮説を検証する」で紹介されている仮説検証を通してプロダクトを改善するための思考法については、デザイナーが明日からすぐにでも取り入れられるような内容となっています。
さらにもう一歩ビジネス領域にも踏み込みたいというデザイナーには、第6章の「プロダクトアナリティクス」の章で紹介されているデータ分析手法も十分にデザイナーのワークフローに取り入れることができる内容になっていると思います。