
スノッブ効果とは?
スノッブ効果(snob effect)とは “他の人が持っているものと同じモノは欲しくない”という心理から、大勢の人が所有するモノに対して個人の購買意欲や需要が減少してしまうという現象です。主に行動経済学やマーケティングの領域で用いられている用語です。
提唱したのは、アメリカの理論経済学者であるハーヴェイ・ライベンシュタインです。彼が1950年に発表した論文「消費者需要理論におけるバンドワゴン効果、スノッブ効果、及びヴェブレン効果(Bandwagon, Snob and Veblen Effects in the Theory of Consumers' Demand)」の中で、表題にある3つの概念を提示し、スノッブ効果はその中のひとつとして定義されました。
ここではスノッブ効果の背景にある人の購買行動に影響を与える心理や、ライベンシュタインが論文で提示した3つの概念についてあわせて紹介していきます。
私たちの購買行動は他者に影響を受けている
行動経済学では、消費者が購買行動を起こす際に は、他者に大きな影響を受けることが指摘されています。私たちが何かモノを購入するときには、身近な他者の購買行動や口コミが影響する場合が多い傾向にあるのです。
その背景として、古来から人は基本的にひとりではなく、社会の中で助け合い、影響を与えあいながら生活していく生き物であることが要因のひとつになっているといえるでしょう。基礎心理学的な観点からみると、たとえばアメリカの心理学者アブラハム・マズローの欲求5段階説では、人間は他者と関わり、集団に帰属したいという基本的な欲求をもっているとされています。また、社会や組織の中では人は無意識か意識的なのかを問わず、周りの雰囲気に合わせることで集団の中で逸脱しないように気を配る、同調と呼ばれる心理状態が生じることもあります。
一方で、伝統的な経済学では経済を動かすのは 「欲しい」や「うらやましい」などの個人の欲求に根ざす感情であるとされており、その感情にもやはり、身近な他者の存 在が影響しているといわれています。
前述のライベンシュタインは、人は“周囲との同質化”による、仲間と同じようなものを購入したいとする欲求と、自分はその他大勢の人から乖離した特別な存在でありたいと考える、“周囲との差別化“という、相反するふたつの感情から購買行動の意思決定を下していることに着目しました。そこで“他者の購買に影響を受けて自らも購買したくなる現象”をバンドワゴン効果、反対に、“他者の購買に影響を受けて自らは購買を控えてしまう現象”をスノッブ効果と定義したのです。
ヴェブレン効果については、ライベンシュタインが19世紀から20世紀初頭期のアメリカの経済学者であり社会学者である、ソースティン・ヴェブレンの著書『有閑階級の理論』(1899年)の中で、有閑階級の人々が“自分が目立つため”だったり “人に見せびらかす顕示性が高い商品”ほど高額であっても購入するという現象を衒示的消費(げんじてきしょうひ)と論じたことに着目して命名されました。