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進化したZOZOのファッションコーディネートアプリ「WEAR」の体験設計・精度を検証してみた

最終更新日:2024.10.21
進化したZOZOのファッションコーディネートアプリ「WEAR」の体験設計・精度を検証してみた

2013年10月にサービスを開始し、1,600万ダウンロードを突破しているZOZOのファッションコーディネートアプリ「WEAR」。2024年5月にはファッションに特化したAIを活用してリニューアル、「好みのジャンル傾向」がわかるファッションジャンル診断や画面上でさまざまなメイクを試せる「WEARお試しメイク」などを新たに提供開始している。

インフルエンサーをはじめ、一般ユーザーもファッションコーディネートやメイク画像を投稿でき、能動的に楽しめるコンテンツが充実している。本記事では、リニューアルしたWEARを筆者が試しながら体験設計の工夫やテクノロジーの精度を紹介したい。

パーソナライズされた提案で「もっと見たい」を促進

WEARをダウンロードすると、まずはズラッとコーディネート写真が表示され、好きなコーディネートを5枚以上選ぶように指示される。

男女別にコーディネート一覧が表示され、好きなものを選ぶ

男女別にコーディネート一覧が表示され、好きなものを選ぶ

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その後、好みのジャンル傾向が診断される(ZOZO提供)

コーディネート写真を選ぶと、すぐに診断結果が表示される。筆者の場合は「ちょこっとキュートなフェミニン」で、普段の好みと若干のズレを感じた。ZOZOTOWNは10代後半から50代までをターゲットとしているが、ボリュームゾーンは20〜30代であり、コーディネート写真も若年層向けにセレクトされている。筆者の年齢はそれよりも年上になるため、若干感覚のズレが生じたのかもしれない。

このファッションジャンル診断は全144パターンで診断され、12種類のファッションジャンルによって構成されている。なお、診断にはZOZOがリアル店舗で提供する超パーソナルスタイリングサービス「niaulab(似合うラボ) by ZOZO」で得た独自の知見が活かされているという。

診断結果を活かして、WEARに投稿されている1,400万件以上のコーディネート投稿から「好みのジャンル傾向」とジャンル構成が近いコーディネートを検索できる。コーディネートはインフルエンサーだけでなくショップスタッフや一般ユーザーも自由に投稿でき、洗練されたスタイルから親近感が湧くものまでさまざまだ。身長も表記されているので、自分に近い体型の人のコーディネートは参考になりやすいと感じた。

また、コーディネート検索の絞り込み機能では最大3つのジャンルを任意で選択し、選んだジャンルで構成されたコーディネートの検索も可能だ。

診断結果を活かしたパーソナライズな提案(左)に加え、任意で選んだカテゴリからの提案(右)も可能だ

診断結果を活かしたパーソナライズな提案(左)に加え、任意で選んだカテゴリからの提案(右)も可能だ

好みのコーディネートを選ぶと使用アイテムが下部に表示され、購入までのUXがスムーズだ

好みのコーディネートを選ぶと使用アイテムが下部に表示され、購入までのUXがスムーズだ

筆者の感覚では、AIの診断による提案よりも任意選択した3つのジャンルで構成したコーディネート検索のほうが、自身の好みにマッチしていた。好みのコーディネートをタップすると使用アイテムが判明し、買物ページに飛ぶこともできる。さらに使用アイテムを使った別のコーディネートが同じページ内に表示されている。

コーディネート検索から購入ページに移行するまでのUXがスムーズで、ファッションに興味を持つ一ユーザーとして利用したところ長時間見ていても飽きなかった。ここから購入にいたる可能性は十分にありそうだ。「好みのジャンル傾向」のグラフは、閲覧したコーディネートをもとに順次変化するほか、任意のタイミングでの再診断も可能になっている。

ファッション・メイクに特化したSNSの役割も

WEARにはパーソナライズされたコーディネート提案を閲覧するだけでなく、投稿やフォロー機能を使って能動的な体験ができる特徴もある。

コーディネート、メイク、ノウハウ動画を投稿でき、反応も得やすい

コーディネート、メイク、ノウハウ動画を投稿でき、反応も得やすい

ユーザーは「ファッションコーディネート」「メイク」「ノウハウ動画」を投稿可能で、総ユーザー数が多いためか投稿に対してリアクションが付きやすい。試しにメイクを投稿したところ、翌日には数名から「いいね」や「お気に入り」のリアクションを得られた。

インフルエンサーとして活躍する「WEARISTA」は、一目でわかるようになっている

インフルエンサーとして活躍する「WEARISTA」は、一目でわかるようになっている

SNSのように「フォロー機能」もあり、フォロワー数が表示され影響力が可視化されている。WEAR公認のファッショニスタである「WEARISTA」には、名前の横に「チェックマーク」が表示されており、センスの高いスタイリングやトレンドを取り入れた着こなしで多くのユーザーのお手本となり、業界を盛り上げるインフルエンサーだという。WEARISTAには、高橋愛さん、浅野忠信さんといった著名人やファッションインフルエンサーがいるそうだ。

WEARISTAのメリットとして、「露出の機会がアップする」「ZOZOTOWNで利用可能なポイントが付与される」「ファッションブランドとのコラボレーション機会が得られるチャンスが増える」などがある。

WEARでは、WEARISTAになれる投稿企画「WEARセンバツ」を定期的に開催しており、お題に沿って投稿したユーザーの中からWEARISTAを認定する場合があるそうだ。

ファッション・メイクに特化したSNSとして、ファッショ��ンブランドも積極的に活用している印象だ(ZOZO提供)

ファッション・メイクに特化したSNSとして、ファッションブランドも積極的に活用している印象だ(ZOZO提供)

ファッションやメイクはInstagramやTikTokが特に相性が良いと考えられ、Xでも関連の投稿が反響を呼んでいるのを見かける。一方で、すでに影響力の高いインフルエンサーが多く存在しており、多様な価値観のユーザーが存在するためフォロワー獲得の難しさがあると思われる。

その点、WEARは投稿がファッションとメイクに特化されており、すでにその領域に興味関心を持つユーザーが集まっている。この領域で存在感を高めたい人にとっては、優位性があるかもしれない。

いろいろと試したくなる「お試しメイク」機能

続いて、「お試しメイク」も体験してみた。同機能は投稿されているメイク画像と同じメイクを画面上で試すことができるもので、自身が投稿したメイクを他のユーザーに試してもらうことも可能だ。

使用したコスメアイテムをタグ付けして投稿する

使用したコスメアイテムをタグ付けして投稿する

メイク投稿では、使用したコスメアイテムをタグ付けして画像・動画投稿が可能で、ZOZOTOWNやZOZOCOSMEで取り扱いのあるアイテムはメイク投稿詳細から購入できる。

お試しメイクがその後の購入にいたるかどうかは、その精度がポイントになるはずだが、筆者の感覚では、ここからコスメを購入したいという意欲にはつながらなかった。特に眉毛が前髪に隠れていると判別が難しいようだ。

写真左のメイクを試したのが右の写真だが、眉毛の違和感が強かった

写真左のメイクを試したのが右の写真だが、眉毛の違和感が強かった

左側はお試しメイクをしないノーマルの状態。真ん中のメイクを試したのが右の写真で、目の二重幅が変わり別人のような印象に。眉毛の違和感はさらに強くなった

左側はお試しメイクをしないノーマルの状態。真ん中のメイクを試したのが右の写真で、目の二重幅が変わり別人のような印象に。眉毛の違和感はさらに強くなった

アイシャドウやマスカラ、チーク、リップに関してはメイクを乗せる位置のズレは特段感じられなかったが、目の印象がモデルの顔の印象に引っ張られ、二重幅や目の形が変わってしまっていた。メイクを試すなら自分と顔の印象がかけ離れているモデルは避けたほうが良さそうだ。

メイクの濃度調整も可能だが濃くすると違和感が大きくなり、薄くするとナチュラルだがメイクの印象がわかりづらかった

メイクの濃度調整も可能だが濃くすると違和感が大きくなり、薄くするとナチュラルだがメイクの印象がわかりづらかった

一方で精度云々はさておき、「やっていて楽しい」という感覚は芽生えた。さまざまな顔のタイプやメイクが投稿されているので、「試してみたい欲求」も生まれやすい。精度が向上すれば、お試しメイクからコスメアイテムの購入につながることは十分にあるだろうと感じた。

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体験して感じたメリットとデメリット

一ユーザーとしてWEARの一連の機能を体験してみて、以下のメリットを感じた。

● ファッションとメイクのトレンドを一つのアプリで知ることができて効率がいい

どちらもトレンドの要素が気になる領域であり、まとめて知ることができるのは使い勝手が良かった。

● パーソナライズされた体験は没入しやすく、アプリへの滞在時間が増える

今回、たまたま季節の変わり目で新しい洋服が欲しくなるタイミングであったことも関連するが、パーソナライズのコーディネート提案を経て好みのアイテムが見つかり、実際に購入にいたった。没入して滞在時間が増える=購入意欲が高まるのだろうと感じた。

● 一般ユーザーの投稿が多く、コーディネートを参考にしやすい

筆者は身長が153cmと小さいこともあるが、ファッションカタログなどに掲載されているモデルと自身の体型がかけ離れているため、あまり参考にならないことが多かった。その点、WEARは一般ユーザーの投稿が多く、自身に似合うかどうかを判断しやすく、「着てみたい」という気持ちが湧きやすかった。

● 投稿に対して反響があり、投稿への意欲が湧きやすい

上述した通り、筆者が試しに投稿した、それほど個性的ではないメイク画像に対してもリアクションがついた。こうした反響を得られやすい環境は、ユーザーの投稿への意欲を掻き立てやすいと感じた。WEARISTAという認証制度があるため、「影響力を拡大してWEARISTAを目指す」という具体的な目標も立てやすい。

新鮮さを感じる機能が多く、単純に「触っていて楽しい」と感じられた(ZOZO提供)

新鮮さを感じる機能が多く、単純に「触っていて楽しい」と感じられた(ZOZO提供)

総合するとメリットが多く、使い続けたいアプリだった。あげるとすれば、以下のデメリット感じた。

● コンテンツが多く操作がやや複雑

単純にコンテンツが多いので、最初は戸惑った。メイクやファッションの投稿も関連アイテムをタグ付けする必要があり、投稿に時間がかかる。明確な動機がないと頻繁に投稿するのは難しいかもしれない。

● お試しメイクの精度が十分ではなかった

WEARに限ったことではないかもしれないが、関連技術の進化がまだ十分ではないように感じた。

※体験設計や技術の精度に対する捉え方は、あくまで一ユーザーとしての筆者個人の感覚に基づいており、その他のユーザーの感覚と一致するとは限りません。

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執筆小林 香織

「自由なライフスタイル」に憧れて、2016年にOLからフリーライターへ転身。2020年に拠点を北欧に移し、デンマークに6ヵ月、フィンランド・ヘルシンキに約1年長期滞在。現地スタートアップやカンファレンスを多数取材する。2022年3月より拠点を東京に戻し、国内トレンドや北欧・欧州のイノベーションなどをテーマに執筆している。

https://love-trip-kaori.com/
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