
UXデザインの世界では良く知られているユーザージャーニーマップ。多くの場合は、リサーチをもとにプロダクトを利用するユーザーの体験を時系列にまとめて改善ポイントを洗い出すような使い方をすることが多いと思います。
このような場合に描かれるユーザージャーニーマップは、基本的にユーザーがプロダクトを利用している時の体験を中心としているため、プロダクト内の体験を改善するアイデアを考えるきっかけにはなるものの、ユーザーがプロダクトを使用していない日常に新たなタッチポイントを創出したり、プロダクトを再度開くきっかけを生み出すような使い方はあまりされていないのではないでしょうか?
この記事では、マーケティングにおけるカスタマージャーニーマップの使い方を参考に、ユーザーがプロダクトを使用していない時の体験をジャーニーマップとして描くことによるプロダクト改善視点での利点について考えてみたいと思います。
マーケティング的なカスタマージャーニーマップの使い方
新規顧客を獲得するというマーケティングの目的に合わせてカスタマージャーニーマップを使用する場合、主にターゲットとなる人々の日常に焦点を当てて、製品を売り込むことができるタイミングを見定めるような使い方をします。
たとえば、転職を検討し始めた人をターゲットとする求人サイトのマーケティングを目的とする場合、「新たに転職を検討し始めた人」の行動をまとめた以下のようなジャーニーマップが想定できます。
このようなジャーニーマップを描くことで、新たに自社サイトと潜在顧客とのタッチポイントを創出できそうなポイントを洗い出すのです。
上記の例であれば、
転職検討直後の検索キーワード「〇〇 年収」にリスティング広告を出稿
子供が生まれるなど、ライフステージが変わるタイミングに合わせた転職訴求
などの施策を検討することができそうです。
やや大雑把な解説とはなりましたが、マーケティング的な視点でのジャーニーマップの利用イメージは掴めたのではないでしょうか?
カスタマージャーニーに「入り込む」という考え方
このように新たなタッチポイントの創出を狙う場合、マーケティングの世界ではカスタマージャーニーに入り込むという表現をすることがあります。これは、プロダクトデザインの世界ではあまり聞かない表現かもしれません。
しかし、このジャーニーマップに「入り込む」という視点は、意外とプロダクト改善においても取り入れることができる考え方なのではないでしょうか?特にユーザーの継続率を改善するような施策を考える際には、ユーザーがプロダクトを使っていない日常に入り込んで、より頻繁にプロダクトに戻ってきてもらう方法を考える必要があります。
例えば、毎月お花が届くサブスクリプションサービスを例として考えてみましょう。このサービスではサブスクリプションを管理するモバイルアプリが提供されており、毎月届く花の説明や生産の裏側が見れるコンテンツなどを提供しています。
このアプリの利用時のユーザージャーニーを描いてみると、商品が届いた時にアプリ上で解説を読んだりする以外にはあまりアプリを開く機会はありません。つまりユーザーは月に1回程度しかアプリを開かないのです。
このようなケース で、アプリ利用時のユーザー体験をジャーニーマップ化したとしても、ユーザーの継続率につながるような明確な改善点を洗い出すことは難しいでしょう。そこで役に立つのが、このサービスを利用するユーザーの日常を描くようなジャーニーマップです。
リサーチをもとに上記のようなジャーニーマップを描いたとします。すると、ユーザーは商品受け取り直後にアプリを開き、その後アプリを閉じて商品の利用を開始することがわかります。しかしながら、商品を利用した直後にはアプリを開くことはありません。多くのユーザーは写真を撮ってメッセンジャーアプリで友人や家族に商品の写真を送るようです。
他にも届いた花が枯れてしまいそうな時に、オンライン検索で対処法を調べたりしていることがわかります。このようなユーザーの日常の中で見つかるプロダクトに関連した行動は、新たなタッチポイントや機能を提供するアイデアを与 えてくれます。
この例のケースでは、友人に送付するための割引クーポンのついた特別なデジタルカードの提供や、花が枯れてしまいそうなタイミングに合わせて対処法の提案などを行うこともできるかもしれません。
プロダクト利用時以外のユーザー行動を分析してみるのも良いかも
このようにプロダクト利用時以外のユーザーコードを分析し、ジャーニーマップとして可視化してみることで、プロダクトが提供できる新たな価値を見つけることができます。
プッシュ通知などで新たなコンテンツを配信するタイミングの見定め、写真の共有などユーザーがプロダクトの外で行っている行動に絡めた機能の提供、ユーザーがさらに何かを欲しいと感じるタイミングに合わせたアップセル、またはユーザーがストレスを感じやすいタイミングのフォローアップなど、この方法を応用することで新たなユーザーとの接点を作ることができるのではないでしょうか。
プロダクト開発においては、ユーザー獲得を行うためのマーケティングチームと獲得したユーザーに価値を提供するプロダクトチームのような分業体制になっていることが多いと思います。しかし、すでに獲得したユーザーの利用頻度の向上などといった側面ではマーケティング的な視点がプロダクト開発に活かせる ポイントがありそうですね。