
1冊10分で読める本の要約を提供するサービス「flier(フライヤー)」。1日1冊以上のペースで要約を配信し、テキストと音声で利用できる。
会員数は、個人・法人をあわせて累計124万人超え(2025年4月現在、無料会員を含む)。運営するフライヤー社(東京都千代田区)は2025年2月に東京証券取引所グロース市場へ新規上場したばかりと、勢いに乗っている。
コスパ・タイパの意識が高い現代人に好まれているflierだが、どんな体験設計やデザインが心地よさや利便性につながっているのか。デザイナーの筒井大尊氏に、「UX・UIの工夫」を聞いた。
「テキスト」と「音声」で1冊10分の要約を提供
10年を超えるflierの歩み
2013年10月にリリースされたflierは、忙しいビジネスパーソンに良書との出合いを促進する要約サービスだ。リリース当初から、スタートアップ向けのピッチコンテストで入賞したり、メディアで取り上げられたりして世間の関心を集め、会員数が増加。累計法人導入社数は1200社にのぼる(2025年3月末時点)。
1冊10分の要約を3900冊以上提供(2025年4月時点)
1冊10分で読める本の要約を毎日、会員向けに配信。一部無料で読めるコンテンツもあるが、基本的には有料で、シルバープラン(月550円/毎月5冊まで)とゴールドプラン(月2200円/無制限)の2種類がある。
選書は、大学教授やMBA講師などの有識者を含む選書委員会が行い、今ビジネスパーソンが読むべき書籍を厳選。テキストだけでなく、音声でも要約を配信する。扱う書籍は出版社・著者の許諾を取得しており、実績のあるライターが要約を作成。さらに、出版社で編集経験を持つ社員による品質チェックや出版社・著者の確認を経ることで、品質を担保している。
「flierは30〜40代を中心としたビジネスパーソンに多く利用いただいており、男女比は6:4で男性がやや多い構成となります。法人ユーザーの場合は、福利厚生の一環や人材育成、研修の土台として使われることが多いようです」
要約を読んだ後に書籍の購入に至るケースもあり、出版社にとっても良い宣伝ツールとなっているようだ。「要約が公開されたタイミングで、Amazonの書籍ランキングの順位が上がった」という声が聞かれたこともあるという。
書籍の世界観をジャマしない「無色透明」がコンセプト
flierのWebサイトを見て、筆者が一番に感じたのは「視認性の良さ」だった。特に、サービスの肝となる「要約ページ」は、画面上に余分な情報がなくスッキリしていて、やや大きめのフォントサイズや広めの行間で、“読む”ことに集中しやすい。
情報量を抑えて余白を広めに取り、色を多用しない
「UX・UIにおけるチームのコンセプトは、『無色透明』です。1冊1冊の世界観や伝えたいテーマが異なる書籍を扱っているため、その表現をジャマしないことを最も意識しています」
デザイン原則として、5つのキーワードを設定
背景色を使う場合は、書影の世界観を活かした色をセレクト
「無色透明とは具体的にはどういうことか」と聞くと、「分かりやすい例としては、全体的な色数を減らすほか、コンテンツに寄り添った色使いをしている」との回答。例えば、ホームで表示している「今日の1冊」は、書影から抽出した色を平準化して背景に使用している。そうすることでflierとしての表現を抑えながら、コンテンツの性質を表しているという。
flierのWebサイトのトップページ
書影の並べ方にも、無色透明の価値観が生かされている。読みたい本を見つけやすくするためには、複数の切り口(カテゴリー)で本を紹介するのがベスト。一 方で、画面いっぱいに同一カテゴリーの書籍が表示されると主張が強い印象になり、ユーザーにストレスを与えやすい。そこで、各カテゴリーにおける一画面の表示冊数が少なくなるよう横スクロールを採用した。
利便性を高め、より良い書籍に出会うための「UXの工夫」
体験設計の工夫も、至るところに見られる。最も特徴的なのが、ユーザーの選書を手助けするための機能配置だ。3900冊以上の要約が配信されているため、強い目的意識がない場合、読みたいコンテンツを見つけるのが困難になってしまう。そこで、「レコメンド」や「プレイリスト」といった機能を強化しているという。
ユーザーごとに「オススメ」の書籍が表示される