UXデザイン

ペルソナとは?具体例に沿って効果的に作成するための手順とポイントを解説

最終更新日:2024.04.24
ペルソナとは?具体例に沿って効果的に作成するための手順とポイントを解説

ペルソナとは?ターゲットユーザーのエッセンスを抽出した架空のユーザー像

ペルソナとは?

ペルソナの具体例

ペルソナ(Persona)とは、ユーザーの行動・思考・価値観などのデータをもとに作られた架空のユーザー像です。これをもとに、チーム全体の共通認識を作ることができ、ペルソナを満足させることがサービスの改善につながったり、機能改善の判断の軸としてユーザー中心の設計をするために大変便利な存在と言えます。緻密に設計されたペルソナをチーム内で共有することで、ユーザー像に関するメンバー間での認識のずれを防ぐことができ、正しく一貫したユーザーバリューを届けることにつながります。

ペルソナとターゲットユーザーの違い

ペルソナとターゲットユーザーの違い

よく「ペルソナ」と一緒に聞くことが多いので、「ターゲットユーザー」との違いがわかりづらいと感じる人も多いと思いますが、下記のように全く情報の設定量が違います。

ペルソナ

実際に存在していそうな架空のユーザー 名前、年齢、性格、家族構成、趣味、休日の過ごし方、好きな本・サービスなど詳細な情報がある

ターゲットユーザー

20代 男性 社会人ひとり暮らし 市場の中でもざっくりとどのような年齢層でライフスタイルを持っているか情報がある

ペルソナの役割とは?チームの共通認識を作ることは意外と難しい

ペルソナ自体の役割としては、作成の過程を通じて関係者と共通認識を持つことができることが大きいです。ターゲットユーザーだけだと人物像までイメージするのは難しく、関係者の中でも各自違う認識をしてしまうことがあります。ペルソナは言語化しずらいユーザー像を細かく可視化するツールであり、マネキンを作っていると思っていただくのがわかりやすいと思います。

ペルソナの作り方: データに基づいた設計が重要

ペルソナは様々な手法で作ることができますが、実際のUXデザインにおいて一般的な下記の方法を参考にしていただければと思います。

  1. 定量データを踏まえてターゲットユーザー層を決める

  2. ターゲットユーザーの定性インタビュー調査を実施

  3. ペルソナ・スペクトラムでユーザー属性を洗い出す

  4. ユーザー属性のセグメント毎に分析

  5. 分析結果をペルソナシートに記載する

1. 定量データを踏まえてターゲットユーザー層を決める

全ての人に満足してもらえる製品やサービスを作りたいと思っても、結局は誰にも満足してもらえないサービスになってしまいます。そこで関係者を集めて理想のターゲットユーザーを洗い出します。ワークショップ形式にして付箋に特徴をそれぞれ記入してもらってから、KJ法などで整理をしてユーザー層を決めていくと良いでしょう。

2. ターゲットユーザーの定性インタビュー調査を実施

明らかになったターゲットユーザーの声を実際に聞いていく必要があるので、まずはリクルーティングのためにアンケート調査を実施し、対象のユーザーを洗い出します。その後、対象者にユーザーインタビュー調査を実施することでどのような人物像なのかを明らかにしていきます。

ユーザーインタビューする前にインタビューガイドの作成をしましょう。ガイドを活用することによって必ずヒアリングしたい内容を関係者に事前確認をしながら進め、本番インタビュー前にパイロットインタビュー(インタビューのテスト)を実施し、作成したガイドの質問に対して求めているような回答が得られたかやタイムマネジメントの確認を実施しインタビューガイドをアップデートすることを忘れないようにすることがポイントです。下記のような内容をさらに細分化してヒアリングしていくことが多いと思います。

3. ペルソナ・スペクトラムでユーザー属性を洗い出す

ペルソナスペクトラム

ペルソナ・スペクトラムとはユーザーの特徴をスケール上に可視化して属性を洗い出すことができる手法です。複数人のインタビューを実施すると同じような価値観を洗い出すのにとても便利なのでUXデザインの現場でもよくこの手法を利用します。ペルソナを作ることがゴールではなくてもインタビュー結果のユーザー属性をかんたんに可視化することができるため、是非チャレンジしてみてほしい手法です。

ユーザーインタビューのポイント
ユーザーインタビューは複数名実施することになると思います。実施人数が少ない場合でも時間が経つにつれて、それぞれのユーザーの特徴・思考性などを忘れてしまいがちなので、インタビュー全体が終わるまでペルソナ・スペクトラムを実施しないと思い出すために議事録を確認したりする時間は勿体無いので、インタビュー後のラップアップのひとつの項目として用意しておくと効率よく作成することが出来ます。

4. ユーザー属性のセグメント毎に分析

前ステップでユーザー属性が分かった状態で同じような属性を持っているユーザーのインタビュー発話をKJ法やKA法のように付箋を利用して同じような発話を集めてグループ化しながら分析していきます。

ここで気をつけたいのが分析対応をする方の主観が入らないようにすることが大切です。発話から勝手に想像した言葉を書き換えてしまったりするとそれは妄想でペルソナを作ってしまうことにつながっています。また、インタビューから分析の時間をあけてしまうと忘れてしまうので記憶が鮮明なうちに分析スタートしましょう。

5. 分析結果をペルソナシートに記載する

ペルソナの具体例

ペルソナシートに分析結果から出たデータを記入しながら記入をしていきます。シートに記入が終わったところでペルソナの完成となります。

Figma版 & PDF版 『ペルソナ作成用テンプレート』

unprintedでは、Figmaファイルと印刷して使用できるPDF形式のペルソナ作成用テンプレートを配布しています。どちらも登録やメールアドレスの入力は不要。個人・商用に関わらず自由に使用することができます。

ペルソナ作成用テンプレートの使い方

ペルソナ作成用テンプレートの使い方

ペルソナ作成用テンプレート

ペルソナ作成用テンプレートの使い方

ペルソナは複数人作成してもOK

初めてペルソナを作る方は驚かれるかもしれなませんが、実はペルソナは一人だけではなく数名作ることが一般的です。上記のステップ3で説明したペルソナ・スペクトラムを利用したときに属性がどれくらいでるかで何体のペルソナが作れるか決まります。

仮に3つの属性が出た場合、3人のペルソナを作ることになります。ペルソナはそれぞれの性格や生活環境が違うので、全てのペルソナに合わせて機能を考えるのは難しい場面もあります。数体のペルソナを作った場合は、サービスのユーザー層やターゲットの中で何が重要になってくるかを比較し優先順位をつけるためにメインペルソナ(プライマリーペルソナなど様々な呼ばれ方がある)とサブペルソナを定義します。

ペルソナを作るための調査が困難な場合は?

新規サービスや様々な制限で調査をすることが出来ない場合には推測を元に作成する「プロトペルソナ」という簡易的なペルソナを作ることも可能です。数値が取れない場合でもソーシャルネットワークサービス(SNS)を通じてデスク調査ができる場合も多いので、時間をあまりかけなくても集めることができる情報は用意してから作るのがおすすめです。

気をつけたいポイント
プロトペルソナはペルソナとは違い調査をする前に作ることができるので「今回は時間がないからプロトペルソナでとりあえず対応しよう」と考えてしまうと、データを元にして作成していない推測のペルソナである事をしっかり理解できず勘違いしてしまうメンバーも出てきてしまうので、チームに展開するときは情報が不足している状態である事を伝えるのを怠らないようにしましょう。

ペルソナを作る時のポイント

初めてペルソナを作る時につまづきやすいポイントは意外ですが、かんたんそうに思える「名前」や「年収」決めでした。今まで作ったことがある方も同じように困ったことが出てきたのではないかと思います。

ペルソナの名前の付け方

覚えやすいようによくある名前やサービス名を苗字にしてしまう場合もあると聞きますが、UXデザインの現場では「年齢」「性別」「居住地」などからインターネット上で「1994年 名前ランキング」や「千葉県 苗字 ランキング」などで検索しながらペルソナの名前を決定しています。何事も理由のある情報を入れておいた方がより現実味があるペルソナが作れると思います。

ペルソナの年収の決め方

ペルソナの働いている業界や職場がある地域を考慮して転職サイトなどに載っている年代別年収を参考にして決定することも多いです。イメージで決めてしまうと現実味がないペルソナになってしまうので、困ったらまずは検索してペルソナの属性を抽出していきます。

ペルソナを作る上での注意点

ペルソナを作る上で初心者が失敗しがちなポイントを2点紹介します。

1. ペルソナを作った後の利用目的が決まっていない

ペルソナを作ることがゴールになってしまっていませんか?ペルソナがいた方が良いと認識している方は多いですが、ペルソナを作成した後にどのようにペルソナを活用していくのかが決まっていないと作って終わりになってしまうことがあります。

サービスや環境の変化によりますが、ペルソナはアップデートや新たに作成しないといけない場合も多く。ペルソナを作ってから数年経ったものがあるが確認すると現状のユーザー像とはずれている場合もあります。例えば、近年の話だと感染症拡大の影響で人々の生活は急激に変化しています。以前の生活と全く同じという人はかなり少ないのではないでしょうか?数年前に作ったペルソナは今と同じ生活環境ではありません。目的なく目の前のペルソナ作りをスタートするのは危険なので「ペルソナ作りたいので手伝ってください」など依頼がきた場合は依頼主の本当のゴールは何かそのために本当にペルソナが必要か確認することをおすすめします。

2. 事前調査をせずにイメージや想像からペルソナを作り上げる

サービスによって自分自身もユーザーとして体験できる場合もあります。そんな環境に身を置いていると「私もサービスを使っているひとりのユーザーだから、他のみんなも〜と考えるはず」など思い込んでいる状態でペルソナを作ろうと考える方もいらっしゃいます。

一度サービスの関係者になった時点でもうピュアなユーザーではないことを理解できていないと実際のユーザーとはズレた人物像が出来上がってしまう可能性があります。ペルソナを作る上で、事前に定性的なインタビュー調査と定量的なアンケート調査などを実施し直接ユーザーの声を聞くことを忘れないようにしてください。

ペルソナを共有する

ペルソナが完成したら、チームの人にペルソナを覚えてもらうためにお手洗いの個室ドア内側や休憩スペースにペルソナシートを印刷して貼るなど様々な工夫をして浸透させていくのもひとつの手だと思います。また、ペルソナの行動を可視化するために「カスタマージャーニーマップ」を関係者と一緒に作成することでペルソナについて深く理解してもらいやすくなると思います。

まとめ

本記事では、ペルソナとは何かについて解説してきました。繰り返しになりますが、ペルソナとは想像された架空の人物像であり実際に存在する人でありません。ペルソナを作ったらスタートラインと思いましょう。作成した後にサービス開発に役立てたり、マーケティング戦略を立てたりと活用をしないとせっかく時間と労力をかけて作ったペルソナが利用されずに忘れられてしまいます。(悲しいことですが多くの現場で起こってしまっている事例です)ペルソナを利用して関係者との共通認識を作りユーザー視点をもってサービス改善に役立ててみてください。

byAsami Kihara

製薬会社のエクスペリエンスデザイナー。 ボランティアでFriends of Figma TokyoのCommunity Advocateとして活動しています。

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