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ユーザーシナリオとは?作成ステップを具体例をもとに解説!テンプレート付き

最終更新日:2024.02.09編集部
ユーザーシナリオとは?作成ステップを具体例をもとに解説!テンプレート付き

ユーザーシナリオとは?

ユーザーシナリオとは?

ユーザーシナリオとは、特定のペルソナが製品やサービスを利用する際の「行動・思考・ニーズ・課題」を、ユーザー視点で段階ごとに分析描写する手法です。

主にUXの設計や改善を目的として使われる手法であり、この手法を用いることでデザイナーやマーケターはユーザーの視点を深く理解し、製品やサービスの改善点を見つけ出せるようになります。そのため、ユーザーシナリオを作成することは、ユーザー中心のデザインを実現するための基礎にもなるのです。

ユーザーシナリオは、ユーザーの注意を引く段階から始まり、興味・関心を持つ段階、具体的な情報を検索する段階、最終的には購買やサービスの利用に至るまでの一連の流れを包括的に捉えます。また、製品やサービスの利用後、ユーザーがどのような行動を行うかも考慮して作成します。

この記事で使用しているユーザーシナリオ作成用のテンプレートはこちらから無料でダウンロードできます

ユーザーシナリオを作成するメリット

ユーザーシナリオを作成することで得られるメリットは、主に以下の3点があります。

  • ユーザー視点での行動心理が理解できる

  • UI/UXの作成や改善に活かせる

  • ユーザビリティテストの優先箇所が明確になる

それぞれの内容について解説します。

ユーザー視点での行動心理が理解できる

新しいプロダクトを作成する場合、企業視点でのマーケティングストーリーの設計も大事ですが、ユーザー視点でのストーリーを理解することも重要です。ユーザーシナリオを作成することで、このユーザー視点での行動心理が理解できる点がメリットと言えます。

たとえば、ユーザーが新しいアプリケーションを使用する際の最初のタッチポイントや、特定の機能を使う動機などを理解することは、そのアプリケーションのUI/UXデザインを改善する上で非常に役立ちます。また、ユーザーの行動心理を理解することは、まだ解消できていないニーズの発見にもつながるため、それに応える新たな機能やサービスを開発するための基盤になります。

ユーザーがどのような問題に直面しているか、またそれにどのように対応しているかを知ることで、よりユーザー中心のアプローチを取ることが可能になります。

UI/UXの作成や改善に活かせる

ユーザーシナリオの作成は、UI/UXの作成や改善に直接活かせます。UX(ユーザーエクスペリエンス)は、利用者がサービスや製品を通じて得る体験全体を指し、UI(ユーザーインターフェース)はその体験の接点となる要素です。ユーザーシナリオを通じて、ユーザーがどのような体験を求めているかを理解することで、UIの設計がより効果的におこなえます。

また、UXデザインのプロセスにおいては、ユーザーシナリオを作成することで、ユーザーの共感を得るためのポイントや問題を定義し、必要な解決策を模索することで、よりリアリティのあるプロトタイプの作成も可能になります。

ユーザビリティテストの優先箇所が明確になる

ユーザーシナリオの作成は、ユーザービリティテストの優先箇所を明確にするのにも役立ちます。ユーザービリティテストは、Webサイトやアプリの使い勝手を評価し、改善するための手法です。実際のユーザーに製品を使ってもらい、その体験を通じてサイトやアプリの現状と課題点を明らかにします。

ユーザーシナリオを用いることで、ユーザーの行動や反応を観察し、心理やニーズを理解することが可能になります。これにより、ページの読み込み速度、ナビゲーションの使いやすさ、コンテンツのわかりやすさなど、テストすべき具体的な項目が明確になります。ユーザーの直接的な体験から得られるデータは、サイトやアプリの使いやすさを向上させる貴重な情報源となります。

ユーザーシナリオと関連する用語

ユーザーシナリオの理解を深めるためには、関連する用語や似たような用語の理解も重要です。ここでは、「カスタマージャーニー」「ユーザーストーリー」「ユースケース」といった3つの用語が、ユーザーシナリオとどのように関連しているか、もしくはどのような違いがあるのか解説します。

カスタマージャーニー

カスタマージャーニーマップの例

カスタマージャーニーマップの例

カスタマージャーニーは、顧客がサービスや製品に触れる最初の瞬間から、実際に行動を起こすまでの一連のプロセスを時系列で図式化したものです。このマップは、顧客がどのように製品やサービスを認知し、どのような感情や考えを持ちながら各タッチポイントを経験するかを示します。カスタマージャーニーは、企業のマーケティング視点で顧客の態度変容や意思決定のプロセスを可視化するため、製品開発において重要な役割を果たします。

一方、ユーザーシナリオは、カスタマージャーニーの流れを「ユーザー視点」で具体的なストーリーとしてまとめたものです。ユーザーシナリオでは、顧客が実際に経験する具体的なシチュエーションや行動、感情が詳細に描写されます。これにより、製品やサービスの設計者は、ユーザーのニーズや課題をより深く理解し、ユーザー中心の設計がおこなえます。

カスタマージャーニーとユーザーシナリオは、視点の違いこそあれど、ユーザー体験を理解し改善するために相互に補完し合うフレームワークとも言えます。

ユーザーストーリー

ユーザーストーリーは、ユーザーの視点から製品やサービスの機能の価値を表現するためにまとめた短い一文です。一般的には『⚪︎⚪︎(ペルソナ)が⚪︎⚪︎(理想を実現)するために⚪︎⚪︎(サービスの目標)をしたい』といった形で表すことが多くあります。商品やサービスの機能がどのようにユーザーに価値提供できるかを正確に表すために作成されます。このアプローチにより、開発チームは、ユーザーの視点に立って製品やサービスの機能を設計することが可能になるのです。

そのため、ユーザーシナリオにおけるゴールとプロセスをシンプルな形で表現する側面もあります。開発チームの中で、ユーザーストーリーを端的に理解できるように作成されることも考えられます。

ユースケース

ユースケースは、ユーザーとシステム間のやり取りを可視化したもので、ソフトウェア工学やシステム工学など広く使われています。ユーザーがシステムを使用して特定の目標を達成するための、一連のステップを詳細に記述するものです。ユーザーがシステムをどのように利用するか、どのような順序で操作をおこなうか、どのような結果が得られるかを明確にします。これにより、開発チームはユーザーの要求を正確に理解し、システムの設計や改善に役立てられます。

ユーザーシナリオの具体例

ユーザーシナリオの具体例

上記は人気ブランドアイテムのオンライン購入体験を示した、ユーザーシナリオの具体例です。ペルソナのゴールに向けて、どのような体験をするかを複数のセクションで分析しています。セクションは大きく5つに分類されており、左から順に「注意」「関心」「検索」「購買」「情報共有」を表しています。

「注意」セクションに記載されている内容は、ペルソナがYouTubeやInstagramでオシャレなコートを着ている人を見つける段階を想定した、ユーザー行動やユーザーの心理についてです。「関心」セクションでは、ペルソナが商品に関心を持つであろう体験を示し、「検索」セクションには、関心を持ったペルソナがどのような検索行動をとるかが記載されています。また、「購買」セクションではどのように購入するのかを示し、購入後のペルソナの思考も想定したうえで情報共有のアクションまで示しています。

それぞれの行動に紐づくユーザーの思考やニーズ、課題もセットで記載することで、ユーザー中心の製品開発をおこなうための情報をまとめています。

ユーザーシナリオの作成ステップ

ユーザーシナリオのテンプレート

ここでは、上記の具体例をもとに、ユーザーシナリオの作成方法について、具体的な流れをSTEP1からSTEP6にわけて解説します。

STEP1:ユーザーとビジネスそれぞれのゴールを明確にする

ユーザーシナリオ作成の第一ステップは、ユーザーとビジネスそれぞれのゴールを設定することです。場合によっては、この2つのゴールが一致することもあれば、異なることもあります。

今回は、ユーザーのゴールを「今年の冬に着回せる新しいコートを購入すること」に設定しました。一方で、ビジネス上のゴールは、「購入後の情報拡散」、「再購入」として設定します。

  • ユーザーのゴール: 今年の冬に着回せる新しいコートを購入すること

  • ビジネスのゴール: 「購入後の情報拡散」「再購入」

目的を設定することで、「ペルソナがオンラインでコートを探し、購入、情報拡散するまでのプロセスを想定する」というユーザーシナリオの指針が明確になります。シナリオの方向性が決まれば、後のステップで具体的な行動プロセスやユーザー心理を洗い出す際に、分析のブレもなくなります。

STEP2:ペルソナを設定する

ペルソナ

ユーザーシナリオ作成のステップ2では、ペルソナを設定します。ペルソナとは、ユーザーの行動、思考、価値観などのデータに基づいて作られた架空のユーザー像です。このステップでは、ペルソナの具体的な特徴を定義し、チーム全体で共通の認識を持つことが目的です。

たとえば「郊外に住むユーザーがオンラインで購入を希望する」といったシチュエーションを想定し、そのペルソナの詳細なプロフィールを作成します。なお、ペルソナの作成には以下のような手順が含まれます。

  1. 定量データに基づくターゲットユーザー層の決定

  2. 定性インタビュー調査の実施

  3. ペルソナ・スペクトラムでのユーザー属性の洗い出し

  4. ユーザー属性のセグメントごとの分析

  5. 分析結果をペルソナシートに記載

これらの手順により、ペルソナのリアリティを高め、サービスの改善や機能改善の判断の軸として活用できます。

STEP3:ペルソナの行動プロセスを書き出す

ユーザーシナリオ作成のステップ3では、ペルソナの行動プロセスを書き出します。このステップでは、ペルソナがサービスや製品に接触し、利用するまでの一連の行動を想定してまとめます。この一連の行動は、カスタマージャーニーマップでまとめるとわかりやすくなるので、フレームワークを使うことがオススメです。

カスタマージャーニーマップを作成する際には、ユーザーインタビューや行動データ分析を通じて、ユーザーの行動と心理状態を理解することが重要です。具体的には、ユーザーがサービスにどのような期待を持って流入し、利用中にどのような感情を抱き、利用後にどのように感じたかを把握します。また、サービスを通じて感じた最も大きな価値は何かを明らかにすることも重要です。これらの情報は、ユーザーインタビューを通じて得られる洞察や、行動データの分析によって裏付けられます。

また、この行動の流れに沿って、横軸のプロセスとして構成化します。ここでは「注意」「関心」「検索」「購買」「情報共有」として流れを決めておきましょう。それぞれの行動ステップの名前は、作成するシナリオに合わせて、自由にカスタマイズしても大丈夫です。

STEP4:プロセスごとの詳細アクションを書き出す

ユーザーシナリオ作成のステップ4では、前でまとめたユーザー行動を軸に、プロセスごとの詳細アクションを書き出します。このステップでは、AIDMAやAISAなどのフレームワークも活用し、ペルソナが各段階でどのような行動を取るかを具体的に想定します。

たとえばAIDMAに当てはめると、ペルソナが最初に製品やサービスに注意を向ける瞬間(Attention)から興味を持ち(Interest)、欲求を感じて(Desire)記憶に留め(Memory)、最終的に行動に移す(Action)までの一連の流れを詳細に描き出すことができます。一方、AISASモデルでは、購買(Action)の後に共有(Share)の段階が加わるため、今回のシナリオにより近いユーザー体験が想定できます。

これらのフレームワークをもちいることで、ペルソナの行動パターンをより深く理解し、製品やサービスの設計においてユーザーのニーズに応えるための具体的なアクションが導き出せます。

STEP5:プロセスごとのユーザー心理を書き出す

ユーザーシナリオ作成のステップ5では、プロセスごとのユーザー心理を書き出します。このステップでは、ペルソナが特定の行動を取る背景にある動機や、その行動に至るきっかけを想像し、各セクションごとにユーザーの心理状態を詳細に分析します。今回の例では、「思考」「ニーズ」「課題」にわけて思考を書き起こします。

たとえば、ペルソナが製品やサービスに最初に注意を向けた時、何が関心を引いたのか、その興味はどのような感情やニーズから生じたのかを考察します。また、製品を実際に使用する際の期待や不安、使用後の満足度や不満点など、各段階での心理的変化を深く掘り下げます。

ユーザーの心理を正確に把握することは、製品やサービスの魅力を高め、ユーザーエクスペリエンスを向上させるための重要なステップです。

STEP6:行動プロセスごとに改善できるポイントを探す

ユーザーシナリオ作成の最終ステップでは、行動プロセスごとに改善できるポイントを探します。この段階では、ペルソナの行動プロセスを詳細に分析し、その中でユーザーが直面する可能性のある問題点や不満を特定します。これにより、製品やサービスのユーザーエクスペリエンスを向上させるための具体的な改善策を導き出すことが目的です。

たとえば、ペルソナが製品を選択する際に情報不足を感じる場合、より詳細な製品情報の提供やユーザーレビューの充実が必要かもしれません。また、購入プロセス中の複雑さがユーザーの不満を引き起こしている場合は、WebサイトのデザインやUIの簡素化が求められるでしょう。ユーザーが製品を使用した後のフィードバックを通じて、サポートの改善や追加機能の開発が必要な場合もあります。

このステップを通じて、ユーザーのニーズに応え、製品やサービスの魅力を高めるための改善点を明確にできます。

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ユーザーシナリオテンプレート
ユーザーシナリオテンプレート
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まとめ

この記事では、ユーザーシナリオの概要や作成することで得られるメリット、具体的な作成ステップに至るまで網羅的に解説しました。ユーザーシナリオを作成することで、ターゲットユーザーを深く理解でき、製品やサービスの設計・改善に活かせます。また、ユーザーのニーズに基づいた効果的なコミュニケーション戦略を策定するための基盤としても利用できます。

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